リサーチ・アイ No.2025-078 マレーシア、第13次5カ年計画を公表 ― 2030年までの高所得国入りを目指すも、計画達成に課題あり ― 2025年08月08日 呉子婧マレーシア政府は7月、第13次5カ年計画(2026~30年)を発表。実質GDP成長率の目標を現行計画期間(2021~25年)の実績値並みの年平均+4.5~5.5%に設定し、民間部門をけん引役とする方針。米国関税の影響が本格化しつつあり、輸出依存度の高いマレーシアにとって、米国の関税引き上げは逆風となるが、政府は景気の先行きに対しておおむね強気な見方。同計画は「開発の再構築」をテーマに掲げ、3つの発展の方向性を提示。とりわけ、電気・電子、AI、グリーンエネルギー、ハラールツーリズムといった分野を重点に産業の高度化を図ることで、2030年までの高所得国入りを目指す姿勢。もっとも、計画達成に向けた課題として、以下の2点を指摘可能。第一に、財政の悪化。マレーシアの政府債務はGDP比64.6%に達し、法定上限(65%)に迫る水準。他方、新5カ年計画の遂行には、過去最大となる6,110億リンギの開発予算が必要であり、うち約7割(GDP比3.4%)が国庫負担となる見通し。計画実行を優先して財政悪化への懸念が高まれば、通貨安やインフレの進行を招き、かえって成長力を損なう恐れ。第二に、政権運営の不安定化。増税や補助金縮小への反発を背景に、足元ではアンワル首相の退陣を求める大規模な集会が発生。過去6年間で4回の政権交代に直面したマレーシアでは、議会で安定多数を確保する政党がなく、新5カ年計画に盛り込まれた重要政策の進捗が停滞するリスクも。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)