リサーチ・アイ No.2025-070 台湾の相互関税率は20%、直接的な悪影響は軽微 ― 通貨高、他国・地域への高関税、半導体関税による景気下押しリスクに留意 ― 2025年08月01日 室元翔太米国政府は台湾の相互関税率を20%と発表。台湾の対米輸出のうち、相互関税対象品目の割合は2割程度に過ぎず、経済全体への悪影響は小。もっとも、米国の通商交渉・関税政策が以下3つの経路から台湾経済を下押しするリスクには留意。第1に、通貨高による悪影響。新台湾ドルは、対米通商交渉において通貨安是正が材料になるとの観測を背景に、5月以降、急激に増価。通貨高による輸出単価の下落などを通じて、輸出企業の業況が悪化する恐れ。半導体・情報通信機器の輸出は好調ながら、卑金属や機械類、プラスチック・ゴム製品では、自国通貨建ての輸出単価の下落により、すでに輸出額は前年割れ。第2に、中国やメキシコ・カナダなどへの高関税を通じた間接影響。台湾企業は、積極的に対外直接投資を拡大しており、中国向けの投資残高が最大であるほか、米州への投資も拡大。高関税が課されるこれらの国・地域の景気下振れは、台湾企業の現地ビジネスに打撃。また、台湾は他国・地域の対米輸出から総付加価値の2.1%を獲得。高関税が課される国・地域の対米輸出減少がサプライチェーンを通じて、台湾経済へ間接的に悪影響を及ぼす恐れも。第3に、半導体や電子製品への関税賦課による輸出の大幅下振れ。追加関税の適用が見送られている半導体や電子製品の対米輸出は、台湾の対米輸出全体の6割超に上り、特に、情報通信機器などの電子製品の割合が大。これらの製品が、近日中に公表されるとみられる半導体関税の対象に含まれる場合、台湾経済に大きな下押し圧力が生じる見込み。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)