リサーチ・アイ No.2025-061 デフレ圧力が高まる中国経済 ― 当局は企業間の価格競争抑制、求められる構造的な高貯蓄率の解消 ― 2025年07月23日 細井友洋中国でデフレ圧力が高まり。消費者物価上昇率は政府目標の+2%を大きく下回り、ゼロ%近傍で推移。生産者物価とGDPデフレーターも足元でマイナス幅が拡大。中国政府は、企業間の過度な価格競争がデフレを招いているとの認識から、6月以降、競争抑制に向けた取り組み方針を相次いで表明。もっとも、デフレの背後には高い貯蓄率があり、こうした対策がデフレ圧力緩和にもたらす効果は限定的となる可能性。中国の総貯蓄率(GDPに対する経済全体の貯蓄の割合)は、2003年以降4割超で推移。これは、米国(2割弱)やEU(25%程度)を大きく上回る水準。家計の低い消費性向が、銀行貸し出しなどを通じて企業の投資・生産を押し上げることで、供給過剰になりやすい構造。コロナ禍以降、家計貯蓄は一段と増加。不動産市場の低迷により投資機会が縮小するなかで、行き場を失った貯蓄は、製造業への資金供給を促進。コロナ前後で製造業の固定資産投資(設備投資)が拡大した一方、需要不足のなかで設備の過剰感が高まり、設備稼働率は低下傾向。その結果、企業間の価格競争が激化し、デフレ圧力が高まっている状況。人々の強い貯蓄志向の理由は、社会保障制度の未整備、雇用・賃金の低迷、将来への不安など、複合的。デフレ脱却に向けて、年金・医療・介護における給付充実や負担軽減、出産・子育て支援の拡大、若年・低所得層の長期・安定的なキャリア形成支援など、消費者マインドを転換させる多面的なアプローチが必要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)