リサーチ・アイ No.2025-047
トランプ米大統領、対日関税30~35%の「最悪シナリオ」を提示 ―対米輸出額は3割減少、2025年度のわが国GDPはマイナス成長に ―
2025年07月03日 藤本一輝
日米関税交渉は難航。自動車関税を中心とする品目別関税も含め、全面的な関税引き上げの撤廃を求める日本政府と、相互関税の上乗せ分のみを交渉材料とする米政府の間で議論が膠着している模様。交渉の難航を受けて、トランプ米大統領は対日関税を30~35%まで引き上げる「最悪シナリオ」を提示するなど強硬的な姿勢を崩さず。
仮に対日追加関税のみが35%まで引き上げられた場合、わが国の対米輸出額はベースライン対比▲24~37%減少する試算。「リスクシナリオ(相互関税上乗せ分の発動で24%まで引き上げ)」と比べても、輸出額が▲5%ほど追加的に下押しされる計算に。米国内におけるわが国製品の価格競争力の喪失が対米輸出数量を下押し。価格競争力を維持しようと輸出価格を引き下げた場合も、輸出単価の低下で輸出金額の減少は避けられず。
こうした対米輸出の一段の減少がわが国の景気を大きく下押しする恐れ。これにより、わが国の2025年度の実質GDPは前年比▲0.4%とマイナス成長になる可能性も。
今後の交渉に向けては、中東における地政学リスクが高まるなか、米国産原油の輸入拡大を交渉材料とすることも一案。過去10年で、米国からの原油輸入は大きく増加。こうした実績をアピールしたうえで、原油輸入の一段の拡大で中東への依存を緩和する動きは、わが国のエネルギー供給リスクの軽減・分散の観点からも有効。
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