JRIレビュー Vol.7, No.134 アメリカ経済見通し 2026年07月31日 森田一至足元のアメリカ経済は、底堅く推移している。旺盛なAI需要を背景に、情報処理機械やデータセンター建設などAI関連の設備投資が景気を下支えしている。一方、個人消費は力強さを欠いている。中東情勢の緊迫化を受けてインフレが加速していることに加え、労働需給の緩和から賃金の騰勢が鈍化しており、家計の所得環境の改善が鈍っていることが背景にある。先行きのアメリカ経済は、回復に向かう見通しである。AI需要の拡大とそれに対応した供給体制の整備が、設備投資の増加や生産性の向上、株価の上昇といった複数の経路を通じて景気回復を主導する見込みである。また、インフレ圧力の緩和により、家計の所得環境も改善すると予想される。もっとも、成長のけん引役は一部の産業・所得層に限られ、景気回復は「K字型」の様相を帯びる公算が大きい。AIの普及は、家計部門から企業部門への所得移転を促す方向に作用する。また、テクノロジー企業や金融業といった高付加価値分野に生産性向上の恩恵が集中しやすく、業種間の格差が拡大する見込みである。さらに、金融資産の保有額が大きい富裕層は株高による資産効果を享受できる一方、相対的に少ない低中所得層への恩恵は限定的である。当面のリスクは、AI投資の腰折れと政治的な分断の加速である。AI関連事業の収益性への懸念の高まりや供給制約などによってAI関連投資が停滞した場合、その影響は実体経済と金融市場の双方に波及する恐れがある。加えて、アメリカ政府の強硬な対外政策が自国経済にデメリットとして跳ね返るリスクには注意が必要である。中東危機が再燃した場合、資源高を通じて低中所得層の家計が圧迫され、政権の支持基盤が揺らぐことで、政治的分断が拡大する恐れがある。こうした政治情勢の不安定化は、中間選挙の結果やその後の対外政策にも影響を及ぼし、不確実性やインフレ圧力の高まりを通じて、景気を下振れさせる可能性を高めよう。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)