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JRIレビュー Vol.8, No.135

地方自治体における生成AI 活用の現状と課題 ― 持続可能な自治体運営・地域社会の実現に向けて ―

2026年07月24日 野村敦子


地方自治体では、人口減少や人手不足、財政制約の深刻化を背景に、行政運営や行政サービスの維持、持続可能な地域社会に向けて、DXの推進が不可欠となっている。その中核技術として注目されるのが、生成AIである。国はSociety 5.0の理念のもと、自治体DX推進計画やAI法・AI基本計画を策定し、地方自治体に対して生成AIの導入と活用に向けた施策立案と実施を求めている。他方で、生成AIには情報漏洩、著作権侵害、誤情報生成など様々な問題もあり、地方自治体は利便性とリスクの両面を踏まえた慎重かつ戦略的な実装が求められている。

総務省のデータをもとに、人口規模別・地域別に自治体の生成AI導入の現状を確認した。その結果、政令指定都市など大規模都市の2025年度における導入率は9割前後、それ以外の市が6割程度であるのに対し、町・村は総じて低調である。地域別には、首都圏や東海などの大都市圏、北陸が進んでいる一方で、北海道・東北や四国、山陰、九州などで遅れがみられる。課題として、生成物に対する懸念、人材不足、要機密情報の流出、導入効果が不明、などが挙げられており、小規模自治体ほど導入の余裕がなく、庁内の理解や関心が低いことが障壁となっている。活用分野は、あいさつ文案や議事録要約など文書作成が中心で、効率化や質向上などの効果が確認されている。

先行する自治体の事例をみると、横須賀市は、市長と担当部署の強力な推進力のもとで、全国に先駆けて生成AIを導入しており、予算枠の柔軟な設定や職員の関心を高める各種の普及促進策を通じて成果を挙げている。都城市は、市長のリーダーシップのもとDXを行政改革の一環と位置づけたうえで、部局横断の「カルテット体制」を整え、民間企業と共同で自治体向け生成AIサービスを開発し、横展開を進めている。北海道の当別町は小規模自治体でありながら、現場職員の問題意識を起点に導入を進め、勉強会やエバンジェリスト制度など、全庁的な機運醸成を重視した取り組みを推進している。

基礎自治体を支援する都道府県の事例としては、埼玉県が市町村と埼玉県市町村DX推進ネットワークを設置して、生成AI等新技術の共同利用・共同調達や人材育成・確保、情報提供や相談窓口設置、伴走支援などを実施している。広島県は、「DXShipひろしま」や「ひろしまサンドボックス」など、県と市町、民間企業等の共創基盤を構築し、人材シェアや共同実証を展開するほか、東京都・GovTech東京との連携を進めている。こうした広域連携は、基礎自治体が単独では確保しにくい人材・予算・ノウハウを補完し、地域全体の底上げを図る手段として有効である。

先行する自治体の事例から、規模の違いを超えて共通する成功要因が浮かび上がる。①行政改革を前提として、トップダウンとボトムアップの相互作用が働いていること、②職員の意識改革を重視して、現場主体の自走型の取り組みを展開していること、③まずは「知る、使う、学ぶ」を優先して、スモールスタートから段階的に取り組んでいること、④生成AIをデジタル公共財として捉え、知見の共有や成果の横展開を積極的に推進していること、などである。

これら先行事例も参考に、単独では取り組みが困難な基礎自治体の全庁的な推進体制の整備、すなわち、①人材育成と専門人材の確保、②予算確保と効果の可視化、③適正利用を担保するガイドライン策定、について一段と支援を強化することが求められる。そして、国には、柔軟な研修・専門人材派遣や補助金制度、最新動向を反映したガイドライン策定・支援、安全な共通基盤の開発・構築、先端の技術・制度動向の研究や情報提供などへの取り組みが期待される。さらに、都道府県には、共同化・共通化の取りまとめや協働プラットフォームの構築にまで踏み込み支援していくことが望まれる。生成AIは単なる文書生成・業務効率化ツールから、行政運営や地域社会の課題解決に不可欠な社会インフラへと発展していく可能性を持つ。その将来像に向け、地方自治体には、技術への対応力はもとより、新たな動きや変化を積極的に取り入れ、地域のあるべき姿に結び付ける構想力と実行力が問われているといえよう。


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