JRIレビュー Vol.7, No.125 欧州経済見通し 2025年07月31日 立石宗一郎、中井勇良足元の欧州経済は持ち直している。アメリカによる関税賦課前の駆け込み需要を受けた輸出増が生産を後押ししたほか、底堅い所得環境を受けて個人消費が改善していることが背景にある。当面のユーロ圏経済は減速するものの、景気の底割れは回避される見込みである。アメリカの関税政策はドイツを中心として製造業を低迷させ、ユーロ圏景気全体を押し下げるが、底堅い個人消費や堅調なスペイン経済がユーロ圏全体を下支えすると予想する。2026年には財政拡張の効果が発現し、景気を押し上げる見込みである。イギリス経済は先行き緩やかに回復する見込みである。アメリカ関税政策の影響が限定的であることや、物価の騰勢が鈍化し家計の購買力が向上することが理由である。BOEの利下げも企業の設備投資を下支えする見通しである。こうした標準シナリオに対して、アメリカ・欧州での「自国第一主義」の高まりが当面のリスクである。アメリカは、欧州に対して関税賦課や防衛費負担増を要求している。これによる製造業の弱体化や財政の持続性に対する信認低下が、欧州景気を下押しする恐れがある。さらに、欧州においても、反移民への機運が高まるなど、自国民を優先する動きが強まっている。こうした状況が一層強まる場合、労働力不足や政情混乱を通じて、経済成長力が低下する可能性もある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)