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Economist Column No.2026-071

中間選挙後の米国~分断はより深まる恐れ

2026年10月21日 石川智久


■米国中間選挙の展望~民主党優位の情勢
米国では11月3日に中間選挙が実施される。現時点の情勢を踏まえると、民主党が盛り返すとの見方が強い。選挙結果はなお予断を許さないものの、以下では民主党が一定の勝利を収めることを前提に、選挙後の米国政治の展開を考察する。

■選挙後、米国の分断が一段と深まる可能性
選挙後の米国政治は、どのような方向に向かうのか。結論を先取りすれば、政治・社会の分断が一段と深まる可能性が高い。民主党内では、中道的な政策を重視する主流派と、社会主義的な政策を志向する左派との対立が先鋭化しており、統一的な政策方針を打ち出すことは容易ではない。筆者が各関係者にヒアリングしたところ、多くの分野で民主党内の政策は一本化されておらず、ほぼ唯一の党内の共通項がトランプ政権の弾劾しかない状況のようである。こうした状況下では、中間選挙後も建設的な政策論議が進まず、政権をめぐる疑惑やスキャンダルの追及が過熱するおそれがある。実際、新聞報道等をみると、現在の政権のメンバーのなかには、中間選挙後の民主党によるスキャンダル追及に備えて、弁護士と契約を急いでいる者も増えている模様である。
これに対し、トランプ政権は自らの正当性を訴えるため、従来の強硬姿勢をさらに強める可能性がある。政策手法に対する批判は強いものの、その是非について司法判断が示されるまでに長い時間を要すると見込まれれば、その時間差を利用し、たとえ法的妥当性に疑義があっても、自身が信じる政策を推し進める大統領令を連発する展開も想定される。
また、2年後には大統領選が実施されるが、現時点では民主党に有力な大統領候補が見当たらず、次期大統領選で共和党候補が勝利する可能性も十分にある。そのため、来たる中間選挙で民主党が勝てば、議会と大統領の「ねじれ」が長期化し、米国政治の混迷が一段と深まるシナリオは排除できない。

■米国の内向き志向の長期化を前提とした日本の対応
国内の分断と政治的混乱が続けば、米国は外交に力を割く余裕は乏しくなり、内向き志向が一段と強まる可能性がある。仮に外交面に力を割くとしても、イランとの軍事的緊張への対応に政策資源が集中すれば、アジアへの関与が相対的に低下することが懸念される。その場合、北東アジアの安全保障環境が不安定化する可能性も否定できない。特に警戒すべきは、米国のシンクタンク等で、対中国を意識した防衛体制について、九州・台湾・フィリピン等を結ぶ第一列島線ではなく、小笠原諸島や米領グアムを経由してパプアニューギニアに至る第二列島線まで防衛ラインを後退させるべきとの意見が出てきていることだ。筆者はそれに関して米国の関係者とも議論したが、中国への警戒感は依然として根強く、すぐに防衛ラインを後退させる可能性は極めて低いとみられる。しかし、従来の言動から見て意外な人物までこの種の発言をするようになっており、注意を要するといってよいだろう。
以上を踏まえると、選挙結果がどうなろうと、米国の政治の内向き化が続くとみられるなか、北東アジアへの関与を弱める動きが強まる可能性は否定できない。日本としては、近隣諸国との緊張を回避するような外交戦略を構築していくほか、米国が引き続きアジア、なかんずく日本の安全保障に積極的に関与するように働きかける必要がある。具体的な行動の一例として、半導体関連やレアアース等の米国が関心を寄せる戦略物資等について、日本が西側諸国における重要なポジション・役回りを確立することで、米国にとって日本が不可欠な存在であると認識させることなどが重要であろう。


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