Economist Column No.2026-068
国連におけるP4Mの意義:日本はミドルパワーと米中の橋渡し役を担えるか
2026年10月15日 石川智久
■国連で関心が高まるP4M
米中両国が自国優先の姿勢を強め、他国への経済的威圧を一段と強めることへの懸念が広がるなか、ミドルパワーと呼ばれる国々は、変容する国際秩序にいかに対応するかという課題に直面している。こうした状況下、国連を舞台に新たな動きがみられる。多国間主義の維持・強化を掲げる「P4M(Partners for Multilateralism)」である。これは、ミドルパワー諸国が相互の連携を通じて国際協調を促進する枠組みであり、EU、オーストラリア、バルバドス、ブラジル、カナダ、インド、ケニアが発起主体となっている。EU主導の構想でありながら、米国との衝突に直面しながらミドルパワーの結集を訴えているカナダや、グローバルサウスの代表を自任するインドが参画している点は注目に値する。一方、日本は現時点で参加表明していない。
■P4Mの期待と課題
発起主体には、国際社会で一定の発言力を有する国・地域が多く、P4Mの今後の展開が注目される。もっとも、構想は発表されたばかりであり、具体的な制度設計や活動内容の多くは未定である。現段階では、開放的かつ柔軟な枠組みを志向する方針が示されているにとどまり、理念が先行している面は否めない。加えて、軍事力に代表される強制力や金融面での影響力を持たない枠組みが、どこまで実効をあげられるのかという疑問もある。他方、米中というスーパーパワーへの対抗軸として、参加国・地域の裾野を広げること自体には意義がある。制度設計次第では、参加主体の利害や意思を調整・集約し、国際社会において一定の発言力と影響力を発揮する枠組みへと発展していく可能性がある。
■日本は何をすべきか
日本はP4Mにどのように向き合うべきか。日本にとって、米国が最も重要な同盟国であることに変わりはない。ただし、米国の対外姿勢の変化にも十分注意を払う必要がある。例えば、米国が西半球への関与を重視するドンロー主義は、この数年間で定着しつつあり、かつてのような世界全体への関与は、その是非を別として期待することが難しくなりつつある。日本としては、米国との関係を引き続き重視しながらも、米国以外の国々との関係を深めていくことが求められている。また、中国に対しては、日本との間で政治的な緊張関係が続く一方、両国の経済的な結び付きは依然として深い。そのため日本としては、安全保障上の課題に対応しつつ、関係改善を引き続き模索していく必要がある。
他方、ミドルパワー諸国から日本に寄せられる期待は大きい。ロックフェラー財団とFocaldataが世界34カ国を対象に実施した調査では、世界で指導的役割を果たすことを期待する国を問う設問で、日本はカナダに次ぐ第2位となった。さらに、同調査は、米中が国際社会で主導的な役割を果たすことに対する不満の高まりも示している。こうした国際環境を踏まえれば、日本は米国との同盟関係の強化、中国との関係改善を図ると同時に、米国・中国とミドルパワー諸国との間をつなぐ役割を果たすことも多くの国から期待されていると言えよう。それを実現する具体的な手段の一つとして、P4Mへの積極的な参画は有力な選択肢となろう。
日本には、国際情勢の変化を的確に見極めたうえで、自国の国益と国際社会の安定を両立させる観点から、多国間枠組みへの関与の在り方を戦略的に検討していくことが求められる。
The Rockefeller Foundation ,Focaldata,” Seeking Security and Opportunity in a Stormy World: A 34-Country Survey” September 16, 2026
https://www.rockefellerfoundation.org/wp-content/uploads/2026/09/Seeking-Security-and-Opportunity-in-a-Stormy-World-34-Country-Survey-Report-Final.pdf
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