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Economist Column No.2026-063

日銀が0.25%利上げ: 来年中ごろには政策金利は2%近くまで上昇と予測

2026年09月18日 石川智久


■日銀が追加利上げを決定――「金利のある世界」への移行が本格化
日本銀行は本日、政策金利を0.25%引き上げることを決定した。これにより政策金利は1.25%となり、わが国経済は、長らく続いた超低金利環境から「金利のある世界」へと移行する局面が一段と明確になった。先行きの追加利上げの可能性を見込む声も大きくなってきた。本稿では、今回の利上げの評価と今後の金融政策の方向性、ならびに家計・企業・政府部門への影響について整理する。

■政策金利は来年半ばに2%近傍へ
結論を先取りすれば、今回の利上げは、インフレ期待の定着を防ぎ、資産価格の過熱を抑制する観点から、妥当な政策判断であったと評価できる。また、米国が16日に0.25%の利上げを実施するなか、円安を阻止するという意味でも妥当性があるといえるだろう。内外金利差を背景とする円安圧力を緩和し、輸入物価上昇を通じた家計負担の増大を抑えるうえでも、金融政策の正常化は避けて通れない。また、株価や都心部の不動産価格が上昇するなか、金融引き締め姿勢を示すことは、将来的なバブル形成のリスクを未然に防ぐために重要である。市場、企業、家計の期待インフレ率が2%を上回る水準に達している現状を踏まえれば、日銀が物価安定への強いコミットメントを示す意義は大きい。
今後の金融政策運営においては、政策金利を名目ベースで上げるだけでなく、実質金利をマイナス圏から適正な水準へ引き上げていくことが求められる。この観点からは、日銀が3ヵ月毎0.25%ずつ利上げを進め、2027年半ばに政策金利が2%程度に達する姿が一つの目安となろう。急激な金融環境の変化は市場の不安定化を招きかねないため、日銀には、経済・物価見通しや政策反応関数について丁寧に発信し、市場との対話を一段と強化することが求められる。
同時に留意すべきは、財政運営が金融政策の独立性を制約する、いわゆるフィスカル・ドミナンスへの懸念である。政府が積極財政姿勢を強めるなか、国債の低利調達を優先するあまり、中央銀行に十分な引き締め政策を躊躇させるような事態は回避しなければならない。インフレの進行は、名目GDPを押し上げ、政府が目標とする政府債務残高の対名目GDP比の低下につながる面があるものの、行き過ぎたインフレは国民生活を疲弊させる。さらに、インフレ期待が一段と高まれば、市場金利が物価上昇率を上回る上昇となり、利払い費の増加を通じて財政状況をむしろ悪化させるリスクもある。
先般の骨太方針では、政府が日銀の独立性に留意する姿勢を示した。物価安定と財政健全化を両立させるためには、この方針を単なる方針表明にとどめず、実際の政策運営において徹底することが不可欠である。


■部門別の影響――家計・企業への影響は限定的ながら、格差拡大に注意
部門別にみると、家計部門全体では、預貯金や債券等の金融資産から得られる利息収入の増加が見込まれ、金利上昇の影響は必ずしもマイナス一辺倒ではない。わが国の家計は全体として大きな純金融資産を保有しており、金利上昇は資産所得の増加につながる面がある。企業部門についても、内部留保の蓄積や価格転嫁の進展を踏まえれば、全体として今回の利上げによる下押し圧力は限定的にとどまるとみられる。
もっとも、影響は一様ではない。家計部門では、住宅ローン残高の大きい現役世代、とりわけ不動産価格の上昇が著しい都市部で住宅を取得した層の負担増が懸念される。企業部門でも、借入依存度の高い中小企業や、不動産・小売など金利上昇の影響を受けやすい業種では、収益圧迫が強まる可能性がある。したがって、金融政策の正常化を進める一方で、影響を受けやすい主体に対しては、適切な資金繰り支援や事業再構築支援など、的を絞った政策対応が求められる。
一方、金利上昇の影響が最も大きく表れるのは政府部門である。短期金利の上昇に加え、長期金利にも上昇圧力がかかるなか、国債利払い費が急増するリスクは一段と高まっている。このまま金利上昇が続けば、2030年頃には利払い費が足元の約10兆円から20兆円を超える水準へ膨張する可能性がある。わが国は、低金利の持続を前提に財政再建を先送りできた時代から、金利上昇を前提に歳出・歳入改革を進めざるを得ない時代へ移行している。インフレ期の現在は、デフレ期にアベノミクスを行った頃とは全く状況が逆転している。政府は、もはや超低金利に依存した財政運営が持続可能ではないことを直視し、財政健全化に向けた具体策を早急に示すべきである。


※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。

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