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Economist Column No.2026-052

高市政権の外国人政策~ 秩序維持、人口動態、AIの影響等を踏まえた長期戦略を

2026年08月17日 石川智久


■高市政権の外国人政策―秩序ある共生への第一歩
政府が先般示した経済財政運営の基本方針、いわゆる骨太方針では、外国人政策に関する記述が目立った。具体的には、①一部の外国人による違法行為やルール逸脱に毅然と対応し、国民の不安や不公平感の解消に向けた取り組みを強化すること、②在留許可手数料の見直しや電子渡航認証制度(JESTA)の導入によって確保する財源を外国人政策に活用すること、③「不法滞在者ゼロプラン」を強力に推進し、不法就労対策に必要な体制を整備すること、④一部の民泊で地域住民とのトラブルが生じていることを踏まえ、適切な運営の確保を徹底すること、⑤外国人に対する日本語や日本の制度・ルールに関する教育を充実させること、などである。
わが国に在留する外国人が400万人を超えるなか、受け入れがなし崩し的に拡大することを避け、制度面の整備に着手した点は評価できる。まさに秩序ある共生に向けた第一歩といえるだろう。海外でも、外国人の居住や移民受け入れをめぐる世論は、かつてほど寛容ではなくなっており、受け入れ抑制や国内秩序の維持に目を配るようになっている。とりわけ、先般、スペイン領セウタに多数のモロッコ人が流入した事例にみられるように、移民・難民を先進国に送り込み混乱を生じさせる「移民・難民の武器化」への警戒感も高まっている。今回の方針は、秩序維持という国際的な潮流とも整合的といえよう。

■技術変化等を踏まえた長期ビジョンの作成を急ぐべき
もっとも、外国人の受け入れをめぐる状況は地域や業種によって大きく異なる。外国人材の受け入れに比較的余裕のある地域がある一方、生活インフラや行政サービスがひっ迫している地域もある。また、業種によっては人手不足が深刻で、やむを得ず外国人材への依存度が高まっているケースも少なくない。したがって、全国一律の制度設計にとどまらず、地域の受け入れ余力や産業構造を踏まえた、きめ細かな政策対応が不可欠である。
加えて、今後の外国人政策を考えるうえでは、技術革新が労働需要に及ぼす影響をより深く検討する必要がある。AIやロボットの普及は、ホワイトカラー業務だけでなく、ブルーカラー業務にも影響を及ぼす可能性がある。実際、AIの導入が進む米国や中国では、労働力不足への対応だけでなく、技術代替による雇用維持のあり方も重要な論点となっている。すなわち、将来の政策課題は「人手不足」への対応に限らず、「人手余り」が生じるリスクへの備えにも及ぶ。
政府は8月7日、「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のためのワーキンググループ」の初会合を開いた。同会合では、人口戦略本部における「総合的な戦略」との整合性に配慮する方向が示されている。少子化対策を国として進めるなか、それが奏功した場合には中長期的に外国人労働者に頼る部分は減少するとみられるため、重要な視点といえる。
一方で、外国人が社会経済に与える影響は検討事項に含まれているものの、前述のAIなどの技術革新が必要な外国人労働者数をどの程度変化させるかという論点は、必ずしも十分に掘り下げられていない。
以上のように、外国人政策を持続可能なものとするには、人口動態、地域の受け入れ余力、産業別の人手不足に加え、AI・ロボット等による労働需要の変化といった多様な論点を統合的に見通す長期戦略が求められる。

<参考資料>
内閣官房 外国人の受入れの基本的な在り方の検討のためのワーキンググループ 「外国人の受入れの基本的な在り方の検討をめぐる経緯等」
https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/arikatawg/dai1/shiryo3.pdf


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