Economist Column No.2026-028
外国人政策:特定技能の人数上限問題 ~安易な受入増ではなく、まずは現行の枠組み内で工夫を~
2026年06月09日 石川智久
■特定技能1号で外食業において人数の上限
外国人労働者の在留資格に特定技能という区分がある。これは2019年に導入されたもので、人手不足とされた特定産業分野についての在留資格である。これには1号と2号があり、1号は16の特定分野についてのもので、一定程度の技能があれば在留資格が認められる。在留期間は最大で5年、家族の帯同は認められない。2号は11の特定分野について熟練した技能を持つ外国人を対象としたものであり、在留期間は上限が定められておらず、家族の帯同も可能である。
さて、特定技能1号は分野ごとに受け入れ上限が決まっているが、今般、外食業において上限に達することとなり、本年4月13日より新規受け入れを停止することとなった。これに対して、外食産業側では困惑がみられる。
■安易な上限数引き上げは避けるべき
外食産業では人手不足が深刻化しており、外国人労働者に頼りたい事情は理解できる。しかしながら、人数制限は様々な検証を経て導入されたものであり、その安易な引き上げは避けるべきであろう。仮に外食業で認めた場合、それ以外で上限に近い飲食料品製造業、建設、介護、農業等でも同様の議論が出てくる。それらをすべて認めてなし崩し的に外国人労働者が増えた場合、わが国でも欧米等のように外国人受け入れ反対運動につながる恐れがある。受け入れ枠の増減については慎重に対応すべきだろう。
■まずは早期アナウンス制度を整備すべき
一方で制度について改善すべき点もある。筆者が各方面の声を聞いたところ、今回の外食業の受け入れ停止は、企業側から「突然」なものと受け止められている。政府は特定技能在留外国人数を開示しているが、総数のみの開示であり、枠に対してどれほど余裕があるかは示していない。例えば、枠の80%を超えた場合等は政府が業界に対して早期警戒アナウンスをするなどの対応があってもよいと思われる。
■特定技能2号を増やす努力も必要
現在、特定技能1号の枠が現在埋まった状況にあっても、そこから特定技能2号に移行する人材が増えれば、再び1号を受け入れることが可能である。新規の外国人労働者の供給停止に直面する外食業としては、人材教育に力を入れる取り組みなどを通じて特定技能2号に移行する人材を増やすべきだろう。優秀な人材が増えれば、1号の枠が空くだけでなく、外食業を現場業務だけでなく経営面でもリードしていく人材が増えて、企業の発展や業界全体の活性化に資することが期待できる。
■機械化等を活用した人手不足対応も重要
さらに、人手不足対応には外国人労働者を増やすだけではなく、機械化の推進などによってそもそも必要なとされる員数を減らすことも重要である。具体的には、配膳ロボットや調理ロボットの導入の加速などが求められよう。こうした機械化には投資資金が必要となるが、それに対して政府や自治体が支援することも検討すべきであろう。
■5年毎の見直しの際には総枠だけでなく、制度全体の在り方も再検討すべき
この特定技能の受け入れ人数については、5年毎に見直しが行われる(次回は2029年4月からの5年間)。その際、現行の受け入れ人数が適切であるか、きちんと見直すことは当然必要であろう。一方で、このコラムで紹介したような早期アナウンス制度等、関係者に分かりやすい制度とする工夫も検討すべきだ。また、外国人労働者は都市部に居住する傾向があり、地方部では足らないという意見もある。国全体の総数だけではなく、地域別の受け入れ数のあり方についても検討が必要と考えられる。
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