Economist Column No.2025-076
イスラエル・米国がイラン攻撃~中東情勢が世界経済に与える影響について
2026年03月02日 石川智久
■ホルムズ海峡は世界経済のアキレス腱
2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃に踏み切った。中東情勢が一気に緊迫化するなか、多くの海運会社が運航を停止し、いわば事実のホルムズ海峡封鎖となっている。
わが国では石油備蓄が約250日程度あり、混乱が短期間で収束すれば、悪影響はそれほど出ない。もっとも、長期化すれば、当然ながら備蓄も底をつき、経済的に悪影響が出てくる。備蓄がある間に他国からの調達を増やすなど、事態長期化に対応した国家的なコンティンジェンシー・プランの確立と実行を急ぐべきであろう。
そして、ホルムズ海峡の問題は日本だけの問題にとどまらない。例えば、中国は消費量の約6割を中東に依存している。また、石油備蓄は100日程度とわが国と比べると少ない。その意味では、世界第二位の経済大国である中国における切迫感は非常に大きいといえる。
中東原油の供給不足は、他の原油への需要急増につながり、世界的な原油価格高騰を招く。当社では、最悪のケースとして原油価格が1バレル120ドルまで上昇する恐れがあるとみている。その場合、世界経済が景気後退に陥るリスクは非常に高まる。まさに「21世紀のオイルショック」に警戒が必要な状況といえるだろう。
■中東の混乱の長期化に備えを
今回、米国はイスラエルと共同してイラン攻撃に踏み切ったが、今後、米国がどの程度イランに関与するかは不透明感が強い。昨年末に公表された米国の国家安全保障戦略(NSS)では米国は中東地域への関与を弱める方針が示されており、イランの混乱収束や新政権樹立に向けて責任を持って対応するつもりはない可能性が大きい。一方、これまでは国際機関が各国の利害調整や対立関係の仲立ちに一定の役割を果たしていたが、米国が国際機関に背を向け資金提供もカットするなか、彼らの調整能力も大きく低下している。そのため、周辺の中東諸国が中心となってイランをめぐる情勢の安定化に動く必要に迫られる展開が予見される。しかし、地域内において複雑な利害関係や歴史的経緯がある中東諸国の足並みの一致は難しく、イラン情勢を巡る混乱は長期化する恐れがある。
以上を踏まえると、わが国の政府及び企業は、中東の混乱が長期化することを前提とした戦略を考えていく必要があるだろう。
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