Economist Column No.2025-074
賑わう札幌で考える国土保全のあるべき姿
2026年02月10日 藤波匠
【本論考は、共同通信社のKyodoWeekly 12月22日号の「よんななエコノミー」に寄稿したものに若干の修正を加えたものである】
2025年11月、コロナ禍以降では初めて北海道を訪れた。用向きは札幌市内だったものの、久しぶりの訪問ということもあり、公共交通を乗り継いで郊外地域へも足を延ばしてみた。
札幌の街を歩いてまず思ったのは、人の多さである。札幌の地下街を歩いていても、地下鉄に乗っていても、東京と変わらない人の多さに驚かされた。体感的には、県庁所在地でも、これほど多くの人でにぎわっている都市は、三大都市圏以外では福岡、広島など、数えるほどではないだろうか。
これだけの賑わいがあれば、例えば路線バスなどの地域の公共交通を維持することもある程度可能となるのだろう。実際、札幌市内で路線バスにも乗ってみたが、観光客の多さも手伝って、そこそこの乗車率だった。人手不足の折、札幌でも路線バスを維持するには多くの困難があることは想像に難くないが、少なくとも地方都市でよく見かける、「空気を運ぶ一日数本の路線バス」という状況ではなかった。
統計データで見ると、札幌市の人口は、2020年まで増加傾向にあり、その後は横ばいで推移しており、減り続けている北海道全体とは対照的である。2000年以降人口減少が続く全道に対する札幌市の人口比率は近年急速に高まっており、4割に届こうとしている。全道の人口が急速に減りゆく中、札幌の吸引力が高まる構図が見えてくる。
当然のことながら、札幌以外の地域で、公共交通手段を維持することは難しくなっている。コロナ禍以降だけでも、留萌線や根室線、日高線の一部、また札幌と郊外の都市をつないでいた札沼線の一部が廃止されている。日常的な市民の足である公共交通の維持や新設を考えると、一定の人口規模が必要不可欠となる。札幌への人口集中が進む中で、交通インフラが整理統合される北海道は、まるで人口減少を踏まえた都市のあり方を探る社会実験の真っ最中というような印象である。
日本全体の人口が先細りとなることが不可避である状況下、当然効率的に都市インフラを運営できる大都市周辺に集住を促すコンパクトシティ政策を推進することが合理的であると考えられるが、事はそう簡単ではない。大都市以外の地域でも、過疎地とは言え、農林水産物の生産の場であるだけでなく、製造業の拠点が点在している場合がある。薄く広くとは言え、人々の暮らしの場になっているため、その人たちを支えるサービス業の維持が図られている場合もある。最近では、インバウンドの増加で、そうした地域にある無名観光地がいきなり脚光を浴びる場合も珍しくない。
どのような環境でも、なりわいをもって人々が住み続けている以上、暮らしの場として尊重されるべきである。一方で、過疎地域における公共交通やインフラ整備などを、行政が支え続けることにも限界があることは自明である。今後、北海道に限らず、各地で鉄道やバスの廃線が現実のものとなろう。首都圏も例外ではなく、2月9日、JR東日本が、千葉県を走る久留里線の一部区間を廃止することが発表された。人口減少の日本は、将来どのように国土保全や土地利用を図っていくのか。真剣に議論を深めなければいけない時期に来ているといえよう。
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