Economist Column No.2025-071
衆議院選挙で争点となった「食料品の消費税ゼロ」~市場の懸念は大きく、安易な減税は避けるべき
2026年01月22日 石川智久
■食料品にかかる消費税減税がテーマに
1月23日、衆議院が解散される。総選挙を控え、経済政策で与野党ともに言及しているのが、食料品の消費税減税である。自民・維新の与党は飲食料品の消費税率2年間ゼロの実現に向けた検討を加速するとした一方、野党では中道改革連合が食料品の消費税率を恒久的にゼロにするとし、その財源は政府系ファンドからのリターンで賄うとしている。その他の野党のなかには消費税廃止を公約にしているところもある。食料品は生活必需品であり、減税を望む声の切実さは理解できる。しかしながら、以下の理由から安易な減税は避けるべきと考える。
■インフレの状況下での消費税減税はインフレを加速させる恐れ
わが国では、人手不足が深刻化し、インフレ傾向にある。こうしたなか、過度な減税は景気を過熱させ、インフレも加速させる恐れがある。つまり、物価高対策であるはずの消費減税が、逆にインフレを進行させてしまうリスクに注意する必要がある。
また、与党案の時限的な減税は、減税実施時には消費刺激効果はあるが、減税終了後には消費税率が上昇し、逆に消費の反動減をもたらす。一方で、野党側は恒久減税とし、その財源は政府系ファンドからの収益としているが、減税額が約5兆円に上るなか、政府系ファンドが毎年安定的にそれほどの収益を上げることは何ら保証されていない。当てが外れれば、赤字国債の発行に頼らざるを得ず、結果として財政を悪化させるリスクが大きいといえるだろう。
さらに警戒を要するのは、足元で長期金利が急上昇しており、円安も進行していることである。これは、与野党とも財政再建に後ろ向きであることを、市場が警戒しているからである。円安が大きく進行すれば、消費税減税による生活費軽減の恩恵を輸入インフレが上回り、逆に生活者の苦境に拍車を掛けることも懸念される。また金利が上がれば、当然ながら国債の利払い費が増え、わが国の財政状況がより悪化するほか、住宅ローンの支払い等も厳しくなる。国民からすれば、消費税減税のメリットよりも、インフレや金利上昇によるデメリットをもたらすリスクが大きいと言わざるを得ない。
■選挙目当てではなく、冷静な財政に関する議論を
円安と長期金利上昇がスパイラル的に進行するリスクが無視できなくなるなか、わが国の財政再建は喫緊の課題である。与野党が選挙目当ての人気取りに鎬を削るのではなく、財政の現状を客観視したうえで、冷静な議論を戦わせることを期待したい。
また消費税減税は、生活に余裕がある高所得者層に必要以上の恩恵が及ぶことを考慮すると、消費税減税よりも給付付き税額控除の導入を急ぐべきと考える。
今回の選挙戦での論戦や、選挙後の国会運営においては、バラマキを競うのではなく、財政の持続可能性に留意した骨太な政策論議が求められている。
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