Economist Column No.2025-068
2026年の世界経済:250周年を迎える米国独立宣言・国富論から考える
2026年01月05日 石川智久
■今から250年前の1776年に米国独立宣言と国富論発刊
今年は米国独立宣言、およびアダム・スミスの国富論発刊から250周年である。そこで、本稿ではこの二つの出来事を振り返る視点からトランプ政権の経済政策について考えたい。
■関税への反発が独立戦争へ
英国は、米国独立戦争直前、仏との7年戦争等で財政が疲弊していた。英国はその税負担を植民地米国に求めようとし、砂糖や印紙等に関税をかけていたが、植民地側の反発を受けて、多くを撤回せざるをえなかった。もっとも、財政難に苦しむ英国は米国に対して紅茶への関税だけは撤廃しなかった。その不満がボストン茶会事件に繋がり、1765年バージニア植民地議会においてパトリック・ヘンリーの提唱した「代表なくして課税なし」が決議され、その後の独立戦争へと発展した。そして米国は独立戦争に勝利し、英国は米国という植民地を失うことになった。目の前の税収にこだわったことが、かえって英国に不利益をもたらす結果を招いたと言える。
国富論においては、第4編第7章「植民地」の第3節でこのことについて記載されている。そこでは、米国が代表を送っていない議会の決定による課税を拒絶していることを考慮すると、対立を回避するには、米国に対する課税は英国内と同様のものとし、それに見合うだけの米国の代表を英国に送ることを英国は認めるべき、といった趣旨の提案がみられる。これを経済史の研究者は、アダム・スミスの合邦論と呼んでいる。
■トランプ関税への警鐘
米国独立戦争は、英国からの関税をきっかけに起きた。過酷な税金を課された方は必死で反発し、課税をした方がかえって不利益を被るというのが、歴史の教訓である。
また国富論は、輸出奨励・輸入反対の重商主義に対する批判の書でもある。自国の貿易赤字を目の敵としているトランプ政権の経済政策は、重商主義の復活とも言える。250周年を機に国富論に再び光が当たれば、国際社会において、米国に経済政策の転換を求める声が高まるかもしれない。
国際社会は、米国独立宣言と国富論のバックボーンにある精神をもとに、関税を撤廃した自由貿易こそが、米国と世界にとって長期的な利益をもたらすことを理解し、それを追求していくべきだろう。
<参考文献>
アダム・スミス(著)、高哲男(訳)「国富論(上下)」、講談社学術文庫
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