2025年の関西経済を振り返ると、米トランプ政権の通商政策や中国経済の減速が景気の重石となる一方、大阪・関西万博の成功は関西の人々や企業に自信と一体感をもたらすものとなった。また、10月には自民党と日本維新の会が連立で合意し、関西・奈良出身の高市首相が誕生した。こうした2025年の出来事も踏まえつつ、2026年の関西経済をみる視点として以下3点を指摘したい。
■中国との貿易・観光
第1に、中国との関係である。関西の輸出は中国向けのウェイトが全国に比べて大きく、中国経済減速の影響を大きく受ける。また、日中関係の悪化による中国人観光客の減少も懸念される。関西は、元来インバウンド観光客に占める中国人の割合が高いほか、コロナ禍からの持ち直しも全国を上回るペースで進んでいた。中国人観光客は他のインバウンド観光客に比べて回復が遅れている分、依然として拡大余地があり、さらなる増加が期待されていたものの、むしろ減少に転じてしまう可能性がある。
以上のような状況を踏まえると、関西は、貿易面でも観光面でも、過度な中国依存からの脱却を図っていく必要がある。中国の巨大市場としての魅力は依然として大きいため、その成長を適度に取り込みつつも、輸出先やインバウンド観光客の多角化や分散を進めていくことが求められる。
■ポスト万博に向けた取り組み
第2に、大阪・関西万博のレガシーを形にすることである。万博の開催は、参加者や来場者の高い満足度が示す通り、半年間のイベントとしては成功したといえる。今後は、万博の開催を関西経済の中長期的な活性化につなげていくことが重要となる。
今回の万博では、中小企業やスタートアップ、各種団体、大学などの参加機会が多く設けられ、多様な主体が自らの取り組みを幅広く発信し、様々なつながりを得られたことが大きな収穫といえる。こうした取り組みやつながりが万博の閉幕とともに途絶えてしまってはもったいない。万博をきっかけに生まれた貴重な成果を一過性のものとせず、継続していく必要がある。そのためには、国や自治体、経済団体、大企業などの継続的なサポートも欠かせない。
また、2026年春頃には、万博跡地を開発する事業者の募集が始まる予定である。隣接するIR(カジノを含む統合型リゾート)と合わせて国際観光拠点とする点に違和感はない。2026年は、夢洲はもちろん、その周辺も含めたベイエリアのまちづくりの具体像が見えてくることを期待したい。
■副首都構想と大阪・関西経済
第3に、副首都構想の行方である。自民党と日本維新の会は連立合意書で、2026年の通常国会で法案を成立させるとしている。首都のバックアップに必要な機能や施設、地方自治の推進や二重行政の解消に資する統治機構のあり方など、論点は多岐に渡るものの、ここでは、“多極分散型経済圏を形成する”という点に注目したい。
多極分散型経済圏の形成という観点からは、副首都は東京とは異なる成長産業を持つことが望ましい。大阪・関西に当てはめると、万博でも注目されたエネルギー関連(水素・蓄電池など)やヘルスケア・ライフサイエンス、「食」(飲食サービス、農林水産業)などがある。もし大阪が副首都となれば、こうした産業が大阪・関西で大きく成長するための後押しとなる可能性がある。これらの産業の育成は、わが国の経済安全保障や供給力の強化などの面からも重要となる。
副首都に大阪が選ばれると決まっているわけではないが、大阪が副首都となれば、産業政策の重点的な推進や投資の促進、規制緩和などが期待される。大阪・関西経済の浮揚のきっかけとなり得る施策として、今後の議論の行方が注目される。
<関連レポート>
藤山光雄・西浦瑞穂、「《2025~27年度関西経済見通し》緩やかな回復が続く関西経済~中国経済の減速が外需の重石に~
」、日本総合研究所、リサーチ・レポート No.2025-016(2025年12月2日)※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。

