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Economist Column No.2025-036

国際秩序が変化する中で重要性が増す第9回アフリカ開発会議(TICAD9)

2025年08月04日 石川智久


■TICADとは
8月20~22日に第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜で開催される。TICAD(Tokyo International Conference on African Development)は、アフリカの開発をテーマとする国際会議であり、1993年以降、日本政府が主導してきた。また、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催しており、日本とアフリカ・国際機関の関係強化に資するものである。
アフリカは、今後も人口が増え続け経済成長も期待されるため、世界経済の最後のフロンティアと言われている。そこで、今回のTICAD9の注目点を述べたい。

■国際秩序の変化の中、アフリカと関係を強化する必要性増大。
まず、米国が自国第一主義となり、中国も保護貿易主義を強めるなか、日本としては米中以外の国々と貿易関係を多角化する必要性が高まっている。現在、グローバルサウスへの関心が高まっているが、アフリカもその一部である。アフリカとの経済関係を強化することは、米国への依存度を下げるだけでなく、今後の中長期的なグローバルサウス諸国の成長の果実を日本に取り込むことができるという意味で重要な戦略である。
しかしながら、わが国では近年アフリカへの関心が高まっているにもかかわらず、投資額などは伸び悩んでいる。一方で、中国はアフリカへの投資を増やしており、それをうまく生かして貿易額も増加傾向にある。室元[2025]によると、中国はアフリカ向け輸出に関して、足元では前年比+30%超となり、北米向けの大幅なマイナスをある程度相殺している。日本もこうした動きを参考にする必要がある。
また、米国は新興国に対して支援をすることに対しては非常に後ろ向きになっているが、ビジネスをすることについては、従来よりも前向きな姿勢が見える。日米が協力してアフリカでビジネスを進めていくことも検討に値するであろう。こうした努力は日本・アフリカ・米国の三方良しとなる可能性が高い。

■急激に関心が高まるアフリカ人材
最後に人材育成である。これまで日本政府は、アフリカの人材育成に力を入れてきており、TICADでもテーマになってきた。アフリカの若者の産業人材を育てるための「ABEイニシアチブ」は、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得や日本企業などでのインターンシップを提供するものであり、TICADの実績といえる。
しかしながら、現在までのところ、こうしたプログラム出身者が日本企業とアフリカをつなぐビジネス人材として活躍している例は少ない。日本はこれから労働力人口が減少していくことが予想されているなか、アフリカの優秀な人材が日本で活躍できる環境を整備する必要がある。
一方で、外国人が増えることへの抵抗感も日本社会には存在する。こうした風潮のなかでは、闇雲に外国人材を受け入れるのではなく、一定程度の枠を設定して、その中で日本に適合性が高い人材に絞って、戦略的に受け入れることが重要である。そのためには、日本とアフリカ諸国の間で協定を定めて、コントロールを効かせたかたちの外国人受け入れ策が求められよう。

以上のような視点から、今回のTICADにおいては、とりわけ貿易拡大と人材活用について議論を深めてもらいたい。

【参考資料】室元翔太「中国のアフリカ向け輸出が急増 ― 潜在需要獲得に向けて、持続可能な貿易・投資関係の構築に注目 ―」、リサーチアイ No.2025-066、日本総合研究所




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