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Business & Economic Review 1995年09月号

【戦後50年特集 論文】
「動態組織」パラダイムの提案-日本的組織の変革の方向性

1995年08月25日 事業戦略研究部 上野博


要約

近年の社会/経済/技術の変化は、企業の行動規範を曖昧にするとともに、変化を不連続なものにし、かつスピードアップさせている。このような状況下では、環境変化への組織的対応が遅れることは、企業にとって死活問題となりかねない。

このことは、企業が有形の経営資源を自ら抱え込む戦略が必ずしも正しいものでなくなったことを示唆している。「ヒト、モノ、カネ」は機械への置き換えや外部調達化が可能となってきており、「情報」は社会に氾濫している。 今後成功の鍵となる経営資源は無形のものとなるであろう。それはおそらく[1]人材像(組織が必要とする理想的人材の仮想像)、[2]組織の自由度(必要に応じて最適な資源の組み合わせを実現する仕組み)、[3]ネットワーク(必要時に組織内外から必要資源を結集する調達網)の三つである。いずれも「量」より「質」が重要であり、企業活動展開の「スピード」を決定づけるものである。

これらを備えた組織を「動態組織」と呼んでもよいであろう。動態組織とは、課題や目標に柔軟なグループ編成で対応し、その活動のためにネットワークを活用する組織である。試行錯誤を機動的に繰り返せるという点で、変化の速い環境に適した組織である。動態組織は組織図で説明することは困難であり、内部組織単位間の関係の記述によってはじめて実態を把握できる。組織単位はプロジェクトチームのようなものであり、与えられた期間に目的の達成責任を負うという点で、機能発揮のみを求められる従来型組織の組織単位とは異なる。必要資源は組織内部/外部を問わず調達する。動態組織では、規模の大きさが必ずしも有利とはならない。

日本的組織は「ハードウェア指向」と「イエ」概念を前提に成立しているために、動態組織化は決して簡単ではない。しかし技術革新の方向性からして、近い将来に多くの組織が動態化を避けられなくなるであろう。価値観の統一、プロジェクトチームによる企業運営、目標設定/実績評価/フィードバックの仕組みの同時導入、情報ネットワーク技術の活用等の組織的仕掛けを行うことが組織動態化をスムーズに進めよう。動態化自体が試行錯誤の過程である。
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