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アジア・マンスリー 2026年3月号

トランプ2.0で加速するアジアへの生産移転

2026年02月27日 細井友洋


第二次トランプ政権では、中国からベトナム、インド、タイへのノートパソコンとスマートフォンの生産移転が加速した。今後も中国からアジアへの生産移転のモメンタムは継続する見込みである。

■トランプ政策で米国輸入市場は様変わり
第二次トランプ政権は、発足から短期間で、さまざまな関税政策を展開した。本稿では、第二次トランプ政権のもとで、米国の貿易構造やアジアのサプライチェーンにどのような変化が生じたかを、第一次政権以降の動きと比較しながら分析する。

まず、米国輸入における各国・地域のシェアが、①第一次トランプ政権が発足した2017年からバイデン政権末の2024年までの時期(「トランプ第一期」)、②第二次政権発足の2025年以降の時期(「トランプ第二期」)、でどのように変化したかを確認する。
トランプ第一期は、対中関税の段階的な引き上げを実施し、米国の対中輸入は徐々に減少した。この結果、米国輸入に占める中国のシェアは、その間に8%以上低下し、かわりにベトナム、欧州連合、メキシコ、台湾などがシェアを伸ばした。
トランプ第二期では、ほぼすべての国・地域を対象に相互関税が導入され、自動車、銅など一律の品目別関税も追加されたが、実効関税率で見ると対中関税の伸びがとくに大きい。これは、中国向けの違法薬物対策関税が他の関税に上乗せされることや、電子機器・部品も対象としていることが理由である。相互関税は、基本的に他の関税と重複せず、電子機器・部品は対象外となっている。これにより、トランプ第二期における中国のシェアはさらに低下した一方、台湾、ベトナム、タイ、インドなどのシェアが上昇した。

■中国からアジアへの生産移転は加速
米国輸入におけるシェア変化の一因として、トランプ政権の対中強硬姿勢を背景にグローバル企業が脱中国の動きを加速させ、中国から他国・地域に生産能力を移転したことが挙げられる。ここでは、こうした生産移転の動向を分析する。
生産移転額は直接観測できないため、中国が対米輸出を減少させ、他国・地域が増加させた品目を生産移転が起こった品目と定義し、これをトランプ第一期、第二期、それぞれについて集計した。この際、各国・地域の輸出額の伸びに含まれる米国の需要拡大部分は除外した。

その結果、生産移転総額は、トランプ第一期が1,253億ドル、第二期が883億ドルとなった。第二次政権発足から1年足らずで、トランプ第一期7年間の7割に相当する生産移転が起こったことから、生産移転のモメンタムは大きく加速していると評価できる。ただし、移転先の国・地域と移転品目には差異が生じている。以下では、それらを確認していく。
トランプ第一期、第二期を通じて、中国からの生産移転先としてアジアが占める割合は大きく、第一期の7割から第二期の8割に拡大した。ただし、上位の国・地域の顔ぶれには変化が見られ、第一期ではベトナム、メキシコ、台湾の順にシェアが大きかったが、第二期ではベトナム、インド、タイに置き換わった。後者3カ国の合計シェアは、第一期の4割から第二期の6割に上昇しており、ベトナム単独で中国の生産移転額の4割を得た格好である。

品目別では、トランプ第一期、第二期を通じて電子機器が移転額の上位を占める。ただし、その内訳は変化しており、第一期では、ルータの割合が大きかったが、第二期ではノートパソコンとスマートフォンの割合がとくに拡大し、この2品目だけで移転額全体の4割超を占める。第一期では、上位10品目を合計しても全体の4割に満たなかったことから、第二期では、生産移転が少数の電子機器に集中していることがわかる。

これらの生産移転が第二期で加速した理由として、①トランプ第一期以降、グローバル企業が中国以外の国・地域でノートパソコンとスマートフォンの組立工程を拡大させてきたこと、②第二期で、中国製品のみが関税の対象となり、他国・地域に比べて割高になったことがあげられる。
ノートパソコンはベトナムとタイ、スマートフォンはインドとベトナムが主な移転先となっていることから、第二期においては、ノートパソコンとスマートフォンの生産が中国からベトナム、インド、タイに移転する動きが全体を主導する構図にあると言える。

■今後もアジアへの生産移転は継続
中国からアジアへの生産移転は、電子機器を中心に当面継続する可能性が高い。米中貿易対立は一時的な休戦状態にあるものの、米国が中国に対して大幅な関税引き上げを再び行う可能性はくすぶり、グローバル企業にとって中国に生産を集中させるリスクが大きいためである。

移転先の候補としては、ベトナムやインドなどが有力であり、現在中国から生産が移転している国・地域が引き続き恩恵を受ける見通しである。これまでの移転により、電子機器などの産業が一定程度集積していることや、労働コストが低いことなどが強みとなると考えられる。


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