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コラム「研究員のココロ」

教育産業ソリューションシリーズ(第4回:フランチャイズ・ビジネス)
~教育産業(学習塾)におけるフランチャイズ・ビジネス~

2007年12月10日 野尻剛


本シリーズでは成長戦略クラスターが取り組んでいる、学習塾をはじめとする教育産業向けのソリューションについてテーマ別にご紹介しております。詳細につきましては当クラスターまでお問い合わせください。

日本におけるフランチャイズ・ビジネスの傾向

 日本のフランチャイズ・ビジネスは年々増加しており、売上規模は約19兆6,000億円、チェーン数は1,200近くを数える。この数字は、世界的に見ても大きく、日本でフランチャイズ・ビジネスが広く根付いていることがわかる。
 その原動力となったのが、セブンイレブンを筆頭とするコンビニエンスストアの発展である。チェーンを小売業・外食業・サービス業の3つに大別した場合、コンビニエンスストアを含む小売業が約13兆円の規模となっており、全体の2/3近くを占めている。
 一方、チェーン数で比較した場合、トップは外食業で全体の40%強を占め、残りを小売業とサービス業とで二分している状況にある。この状況をチェーン当りの売上高で比較してみると一目瞭然で、

  • 小売業 ・・・374億円

  • 外食業 ・・・82億円

  • サービス業・・・73億円

と大きな開きがある。勿論、そもそもの業種の違いとして、小売業は売上規模が大きくなりやすいわけであるが、外食業やサービス業では、小売業ほどの有力な大手チェーンが少ない状況にあると言える。

サービス業におけるフランチャイズ・ビジネスの難しさ

 コンビニエンスストアがフランチャイズ・ビジネスで成功した要因は、徹底した標準化を図ったことにある。商品、オペレーション、内装・レイアウト、ありとあらゆる事項を標準化していくことで、対顧客では均一なサービス提供の実現を、対加盟店では運営のし易さを実現でき、チェーン全体としての成功・発展を収めてきたのである。成熟市場となった近年は、逆にこれらが足枷となっている向きもあるが、やはりフランチャイズ・ビジネスを検討していく上で、見習うべき点は多い。
 この標準化という観点で、サービス業は極めて難しい業種である。それは顧客に提供するサービスの内、接客の占める割合が高いためである。例えば、マッサージであればマッサージ師の、ヘアサロンであれば美容師の、担当者個々人の持つ技術や接客態度により、顧客の満足度は大きく上下することになる。結果として、チェーンとしてのサービスレベルが不均一となり、チェーンブランドの確立は容易ではない。
 こうした個人に帰属する技術や接客態度を標準化するには、教育やマニュアルによる指導等が必須となる。特に技術については、相当の教育が必要となり時間がかかる。時間がかかることは、加盟店にとっても本部にとっても好ましい事ではない。加盟店はより早く手軽に起業できることを望むであろうし、本部もより早い店舗網の拡大を望むからである。
 ここにサービス業をフランチャイズ・ビジネスとして展開する難しさがある。逆に言えば、教育が短時間で済むビジネスモデルを構築することが、サービス業でフランチャイズ・ビジネスを成功させる肝と言える。

学習塾におけるフランチャイズ・ビジネスの可能性

 学習塾の場合、講師による講義・指導内容がサービスレベルを大きく左右させる。従って、ここでの標準化及びそのための教育が重要なポイントとなるが、各社が実際に取組んでいる施策をまとめてみると次のようなものが挙げられる。

  • 教材、指導カリキュラムの整備

  • システマティックな学力判定手段の整備

  • DVDによる学習環境の整備

  • 講師採用段階での判定手段の整備

  • 模擬講義等の教育プロセスの整備 等

 傾向としては、講師の講義・指導をサポートする役割を標準化して脇を固めようという意図が見られる。こうすることで、講師個人に依存する部分を極力減らし、結果として講師教育が短時間で済むビジネスモデルを目指していると言える。
 仮に、こうした施策が上手く行った場合には、学習塾のフランチャイズ・ビジネスは非常に面白い可能性を持ち合わせている。何故ならば、初期投資が低額であり、かつ、立地に柔軟性があるため、他業種のフランチャイズと比較して、加盟店にとっては始めやすく、投資リスクが小さいという利点があるからである。
 また、全国には数万ものの小規模な学習塾が存在しており、そうした既存の学習塾をターゲットにすることで、より効率的なフランチャイズ・ビジネスの展開が期待できることも、フランチャイズ・ビジネスが有力な選択肢と為り得る要素と考える。

以上

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