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コラム「研究員のココロ」

教育産業ソリューションシリーズ(第5回:人事制度)<前編>
~学習塾・予備校業界の組織体制と人事制度に関する考察~

2008年01月11日 佐藤邦明


本シリーズでは成長戦略クラスターが取り組んでいる、学習塾をはじめとする教育産業向けのソリューションについてテーマ別にご紹介しております。詳細につきましては当クラスターまでお問い合わせください。


 少子化にも拘らず、大都市圏での中高一貫校受験者の増加、全国的な大学進学希望者の増加に伴い、学習塾・予備校に対する教育ニーズは安定的に推移しており、大手学習塾・予備校の多くは好業績をあげています。ただ、一方で教育資金の出し手である保護者の塾・予備校を選択する眼は年々厳しくなっているため、コストを抑えながらも教育の質を高め、他社を凌駕する結果を出す必要性に迫られています。
 本稿では、内部管理を充実させながらも質の高い教育サービスを提供するための組織と人事制度について、調査事例を参考に課題と解決の方策を探っていきます。


1.個人指導塾、集団指導塾(予備校)の組織体制について

(1)個人指導塾の組織

●特徴
 教室のフランチャイズ展開をしている企業が多く、基本的に従業員の数そのものは少数です。日本全国で1500教室を達成したA社でも従業員数は約350名。(他に本部契約講師数が約1500名)。教室管理部門(直営、フランチャイズ、プロモーション、教材開発、研修等の業務担当)は70名前後、スタッフ部門(人事・総務・経理など企業を維持するための管理部門)も40名前後と少なくなっています。

●課題
 顧客である生徒の保護者は、直営・フランチャイズに拘らず、同一ブランドの教室には同一水準の教育を期待しています。その点で、フランチャイズ教室の数に比べ、教室管理部門が手薄と思われます。フランチャイズ教室の指導状況や保護者の声の調査、本部による教材開発や講師の研修にもっと注力すべきではないでしょうか。
 筆者の子供が通う大手個人指導塾では、講師の大半が学生のアルバイト?と思われ、担当講師が変わるのは日常茶飯事であり、授業の継続性に問題があるように思われます。また統一的な研修を受けていないのか、講師により勉強の教え方、子供への接し方にもかなりばらつきが感じられます。

●解決の方策
 講師が授業に専念できるよう、直営教室には正社員の事務長(事務責任者)を置き、講師の労務管理、教室の総務、情報管理、父兄対応の窓口とします。フランチャイズ教室の場合も直営教室とサービスに格差が生じないよう、本社に地区別の教室支援担当者を置き、定期的に巡回できるような体制作りを行ってはどうでしょうか。
 また、管理部門軽視の風土を一掃し、スタッフ部門従業員に対する処遇やモチベーションアップの方策が必要と思われます。(※後述「学習塾・予備校の人事制度について」ご参照)

(2)集団指導塾(予備校)の組織

●特徴
 教育事業は基本的に直営で展開しています。B社の場合は、直営教室約350、従業員数約1700名、契約講師約7400名。一方、スタッフ部門の人員は約100名と非常に少なくなっています。教室管理部門の人員は不明ですが、少数と思われます。

●課題
 個人指導塾と同様、本社部門が手薄なため、保護者へのきめ細かい対応や地域に即したプロモーション活動などが十分行われているかが非常に気になります。
 筆者が訪問した某大手予備校では、店頭のパンフレットこそ立派なものでしたが、窓口担当者はおよそサービス業では考えられないような風体(頭髪や身だしなみ)をしていたほか、実際の学費や授業内容の説明資料は、パンフレットの一部をモノクロコピーした粗末なものでした。また、DMの勧誘により子供を「お試し授業」に参加させたところ、事務ミス(先方説明)のため、パンフレットに掲載されたサービスの一部が受けられませんでした。

●解決の方策
 前述のように各直営教室に業務担当者を置き、教室の総務、父兄対応、情報管理、生徒募集等の業務を強化すべきと考えます。
また、管理部門軽視の風土を一掃し、スタッフ部門従業員のモチベーションアップが必要なのは集団指導塾でも同様と思われます。

←第5回<後編>を見る | 第4回を見る→

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