コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2008年09月号日本総合研究所 シンポジウム

【新しい国のかたち-連邦型地域主権国家の創造】
社会移動が加速する人口の地域偏在-急速に進む地方からの人口移動に警鐘を鳴らす

2008年08月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 主任研究員 藤波匠


要約

  1. 地方と首都圏の景況格差を背景に、よりよい仕事を求める人の動きが、人口の地域偏在をもたらしている。

  2. 昨今の社会移動の特徴は、地方から生産年齢の幅広い年齢層が転出超過になっていることである。その理由としては、新卒者の就職先として、首都圏や愛知県などの企業への志向性が高まっていることと、地方の支所や営業所の人員削減などの影響があげられる。

  3. このような社会移動の状況が長期にわたり持続すれば、国立社会保障・人口問題研究所が2007年5月に公表した「日本の都道府県別将来推計人口」が描く将来像よりも大きな人口の偏在を生じる懸念がある。地方からは生産年齢人口が流出する一方、東京などでは一般に言われる生産年齢人口の減少はなく、今後も現状維持もしくは増加する。

  4. 地方から東京などへの人口移動の進展は、a.地方における成長の担い手の喪失、b.インフラ投資の非効率性、をもたらす。地方からの転出の中心は生産年齢層であり、彼らの流出は、地域の成長の可能性を低下させる。また、減少する人口と投資額の不釣合いにより生ずる投資の非効率性は、他の使途に振り向けることが可能である財源の逸失を意味する。

  5. 人口が東京に集中し、成長を一手に引き受ける中央集権的国家の在り方は、中長期的にみて限界にあると考えられる。ちなみに、生産年齢人口が急速に減少する地方の成長力の低下を踏まえて、わが国全体の成長率を維持していくには、東京都ではバブル期並みの成長が必要になるという非現実的な試算結果が得られる。

  6. 地方においては、人口の流出が地域経済の落ち込みを招き、それが一層の人口流出を生じる人口流出スパイラルに落ち込む可能性が高い。一人でも多くの若い世代を地域につなぎとめ、彼らの活動により地域を活性化させ、さらに人を招く好循環を築きあげる必要がある。そのためには、地域主導で域内への投資の拡大を図り、雇用の確保に努めなければならない。まずは、行財政改革の推進により公共投資に振り向ける財源の確保や、民間投資の誘発を模索する必要がある。各地域がそれぞれのアイデアや財源、手法に基づく分権的な取り組みにより、若い世代をつなぎとめる積極的な投資を行うことが、地方からの人材流出抑制の鍵となる。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ