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Business & Economic Review 2006年11月号

【REPORT】
世帯人員の減少が個人消費に与える影響

2006年10月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 主任研究員 枩村秀樹


要約

  1. 景気が低迷していた1990年代後半以降も、個人消費の増勢は持続し、わが国景気を下支えした。もっとも、個人消費の拡大は、所得増加を背景としたものではなく、平均消費性向の引き上げが主因であった。本レポートでは、平均消費性向の上昇要因として、人口構造の変化が個人消費を押し上げる効果に着目した。とりわけ、世帯人員が減少するにしたがい、一人当たり消費支出額が増加する点に焦点を当て、消費押し上げ効果を試算した。

  2. 試算は、一人当たり消費支出額を基準年で固定化したうえで、人口構造の変化のみを全体の消費額に反映させた。具体的には、世帯主の年齢別、世帯人員別に分けた「人口×一人当たり消費支出額」を積み上げて、全体の消費額を算出した。さらに、そうして算出した消費額の変動要因を、a.人口要因、b.年齢要因、c.世帯人員要因、の三つに分解した。

  3. この結果、90年代以降、人口構造の変化が個人消費を大きく押し上げている姿が鮮明になった。とりわけ、世帯人員の減少による消費押し上げ効果が大きく、個人消費に対して、90年代前半は年率0.7%、90年代後半は同0.6%、2000年代前半は同0.5%の押し上げ効果となっている。また、90年を基準とした消費水準でみると、個人消費は、世帯人員要因だけで、2000年時点で6.2%、2005年時点で9.1%も押し上げられていると試算された。95年から2005年にかけての平均消費性向の押し上げ幅も、約5%ポイントに達したと見込まれる。

  4. 以上のように、所得が低迷するなかでの個人消費の拡大は、世帯人員の減少が大きな原因になっている公算が大きい。今後を展望しても、世帯人員の減少傾向が続いて個人消費を押し上げる力が働くため、個人消費は全体的に堅調が持続する見通しである。もっとも、単身世帯の増加やファミリー層の世帯人員減少などを背景に、消費構造は大きく変化する可能性が高い。したがって、企業としては、消費ニーズの変化に積極的に対応していくことが一段と重要になる。
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