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Business & Economic Review 2006年09月号

【REPORT】
株価上昇の消費刺激効果を検証する

2006年08月25日 小方尚子


要約

  1. 本稿では、株価の上昇が個人消費に与える影響の経路、規模を検証。

  2. 近年、株価と個人消費の間には、相関関係がみられ、しかも株価の消費押し上げ効果が高まる傾向。
    2005年までの5年間の関係を前提として試算すると、株価の上昇に伴う個人消費押し上げ効果は、2005年に0.7%、2006年1~3月期にも年率0.7%。

  3. 株価の上昇が個人消費に波及する経路としては以下が考えられる。
    a.値上がりした保有株を処分して得たキャピタルゲインが消費に回る

    b.保有株は処分しないものの、含み益を背景に消費を増やす

    c.株式保有の有無にかかわらず、上記①②の効果が景気を押し上げる効果などへの期待から、消費者のマインドが改善し、消費が促される。

  4. 上記のうち、a.の規模について、家計部門が株式市場(投資信託を含む)からどの程度資金を引き出しているかをみると、家計部門全体では、ここ数年はほぼゼロかマイナス。2005年年間では、株式市場は家計からむしろ6.2兆円の資金を吸い上げた形。

  5. 消費押し上げ効果は上記b.の含み益効果とc.のマインド効果が中心。所得階層別に資産効果をみると、おおむね株式保有が多い高所得層ほど、資産効果が大きい傾向がみられるものの、その関係は、必ずしも安定的ではなく、c.の効果が少なくないことを示唆。

  6. 品目別に資産効果の大きさをみると、株価への反応度が大きい順に、「被服・履物」、「家具・家事用品」、「交際費」、「交通費」。マインドの改善に消費が牽引されやすい、不要不急の“ちょっと贅沢のできる”分野が株価との連動性が高いことを示唆。

  7. 今後を展望すると、当面、株価上昇に伴う資産効果はペースダウンせざるを得ない状況にあるが、やや長期的に展望すると、経済のストック化が進むことや、企業の安定株主としての個人投資家重視の取組みを通じ、消費に対する資産効果の重要性は高まっていこう。
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