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Business & Economic Review 2006年09月号

【REPORT】
ドイツ経済の回復は本物か-進展する構造調整と今後の課題

2006年08月25日 野村拓也


要約

  1. 本稿では、ドイツ経済長期低迷の原因を探るとともに、足許のドイツ経済の回復が「本物」かどうかについて検証する。

  2. ドイツ経済は、2006年1~3月期実質GDP成長率が前年比+1.4%となるなど、緩やかな景気回復傾向が持続している。今回の景気回復局面で特徴的なのは企業部門が久方ぶりの活況を呈している点である。一方で、家計部門は低迷が続いている。

  3. ドイツ経済が長年低迷してきた原因は、同国が歴史的に社会福祉を重視し、「手厚い社会福祉国家体制」を築いてきたことに求められる。家計に手厚い各種制度が、グローバル化・少子高齢化・IT化といった環境変化への適応を妨げ、1990年代以降に「高コスト体質」という構造問題が顕在化することとなった。さらに99年に施された「欧州通貨統合」が、こうした高コスト体質を背景とした経済低迷を一段と深刻化させた。「東西ドイツ統合」もドイツ経済の低迷の一因として考えられる。

  4. もっとも、こうした諸問題にも、近年変化の兆しが出始めている。「高コスト体質」については労働市場改革、税制改革、社会保障改革を含む包括的構造改革法案「アジェンダ2010」に基づく各種法案の施行を契機に、是正に向けた取り組みが進みつつある。また、東西ドイツ統合問題も、近年、解消に向かう兆候がみられる。

  5. 以上のように、長年にわたる低迷の原因となってきた諸問題は徐々に解決に向かっており、ドイツ経済もようやく長期低迷を脱する局面に入りつつあると判断できる。もっとも、依然途半ばであることも事実であり、家計部門が復調し、ドイツ経済が完全に再生するまでには、なお時間を要すると考えられる。

  6. 加えて、欧州通貨統合が経済成長の新たな重石となる懸念もある。金融政策および財政政策の自由度が低下したために、必要なときに機動的な景気政策が打ち出せず、景気の不安定化を招いてしまいかねないという点が懸念されている。

  7. ドイツ経済が文字通りの復活を遂げるためには、「手厚い社会福祉国家体制」を改革する流れを一段と加速させるとともに、自国の強みに磨きをかけることで、単一ユーロ市場の実現が「比較優位の原理」に基づいてドイツ経済の発展に資するような体質強化を行っていくことが必要である。
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