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Business & Economic Review 2005年12月号

【REPORT】
世帯タイプ別にみた個人消費動向

2005年11月25日 調査部 マクロ経済研究センター 主任研究員 小方尚子


要約
  1. 本稿では、世帯タイプ別に足元の個人消費堅調の背景を整理し、その持続力を展望する。

  2. 近年の個人消費動向を振り返ると、90年代終盤以降、引退世帯の消費が堅調に推移する一方、現役勤労者世帯では低迷が続き、とくに中低所得層で顕著であった。しかし、昨年来の回復局面では、この構図が逆転している。

  3. 中低所得勤労者世帯では、雇用所得環境の改善が消費回復に寄与している。マインド面でも底堅さがみられ、不要不急の支出を長らく切り詰めてきた家計の購買意欲がここへきてようやく持ち直し、耐久消費財のペントアップ・デマンド(累積需要)が顕在化した形となっている。

  4. 一方、引退世帯、高所得勤労者世帯では、足元で消費に息切れ傾向がみられる。この背景には、a.保有資産が多いため、90年代後半以降の物価下落がその実質購買力を増加させる効果(ピグー効果)をもたらしてきたが、足元の物価下落幅の縮小によりこれが薄れていること、b.中低所得勤労者層よりも先に耐久消費財の購入が盛り上がったことで、足元はその反動が出ていること、を指摘できる。

  5. 先行きを展望すると、勤労者世帯、引退世帯ともに、基本的には底堅い推移が予想されるものの、一段の加速は見込み難い。緩やかな雇用所得環境の改善持続や資産効果などのプラス要因が期待できる一方で、今後、予定されている家計負担の増大、ピグー効果の剥落などのマイナス要因があるため、消費の浮揚力は限定的と判断される。

  6. 消費の足取りを確実なものとしていくには、企業収益の悪化がボーナスの減少を通じて雇用者所得の下ブレにつながり易くなっているだけに、雇用者所得の増加や資産価値の向上の源泉となる企業の収益性を高めていくことが重要である。また、国民の安心につながる持続可能な社会保障制度の再構築を早期に実現していくことが求められる。
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