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Business & Economic Review 2005年12月号

【REPORT】
アメリカにおける決済・借り入れ手段の多様化とクレジット・カード業界の対応

2005年11月25日 調査部 金融ビジネス調査グループ 主任研究員 岩崎薫里


要約
  1. アメリカのクレジット・カード市場の成長ペースは、ここ3年間大幅に鈍化している。これは根本的には市場の成熟化を映じたものであるが、それ以外に、決済および借り入れ手段が多様化していることが影響している可能性がある。具体的には、決済においてデビット・カード、借り入れにおいてホーム・エクイティ・レンディングが急拡大しており、その影響から決済および借り入れの両面においてクレジット・カードの成長が抑制されていると考えられる。

  2. こうした状況のもと、クレジット・カード・イシュアーが取り組んでいる対応策としては主に以下の3点が指摘できる。
    第1に、クレジット・カードの保持および利用の向上を従来以上に重視するようになっていることである。利息収入の伸び悩みが予想されるなかで、それを補完するためにインターチェンジ・フィー収入を拡大したいとの意向による。その一環として、ポイント・プログラムを拡充する動きが広がっている。例えば、取得したポイントを住宅ローンの返済に充当できるプログラムが出現している。
    第2に、クレジット・カードをそれ単独で捉えるのではなく、他の金融商品との連携を強めようとの試みである。多様化する決済・借り入れニーズに取りこぼしなく対応するとともに、クレジット・カードをテコにクロス・セルを促進するためである。そうした取り組みに際し、クレジット・カードから得られる顧客情報が役に立つ。さらに、クレジット・カードを自行のブランドを強化するためのツールに活用する動きもみられる。
    第3に、クレジット・カードを専業とするモノライン路線からの脱却である。これは一つには、前述のクレジット・カードと他の金融商品との連携強化がモノラインでは実現が困難なことに起因する。主要なモノラインは相次いで銀行の傘下に入る一方、唯一残ったCapital Oneは先般、銀行の買収に踏み切った。

  3. 日本に目を転じると、中期的にみればアメリカと同様、個人の決済・借り入れ手段が多様化する可能性は排除できず、そうした事態に備えた体制づくりを今から考えていくことが賢明と判断される。また、クレジット・カードの魅力を高めることが競合商品との競争に打ち勝つために重要になってくる。その一つの手段であるポイント・プログラムの一層の活性化に向けて、ポイントを住宅ローンの返済に充当するといったアメリカで行われているプログラムは検討に値する。一方、クレジット・カードの本体発行が解禁となったわが国の銀行にとって、クレジット・カードと他の金融商品との連携を強化するアメリカの動きは参考となろう。
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