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Business & Economic Review 2005年07月号

【REPORT】
電機業界の業績悪化とそのインパクト-2001年の景気後退局面との比較

2005年06月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 副主任研究員 枩村秀樹


要約
  1. 2004年10~12月期に、製造業を中心に企業業績の改善テンポが鈍化した。そのため、一部に業績の先行きを不安視する見方が台頭してきた。この背景には、a.企業業績の改善テンポ鈍化は電気機械が主因であり、b.さらに、このような傾向は、その後深刻な落ち込みに転じた2001年の景気後退の初期段階と状況が相似している、という事情がある。そこで、2001年と比較しながら、現在の電気機械の業績状況をみると、次のように整理できる。

  2. まず、足元の電気機械の業績が悪化している背景として、a.内外での需要減少を背景に販売数量が減少していること、b.交易条件(産出価格/投入価格)が悪化していること、c.人件費など固定費削減によるリストラ効果が一巡していること、の3点が指摘される。このうち、a.とb.については、基本的な構図は2001年と同じである。

  3. 2001年との大きな違いとして注目すべきは、電気機械の競争力が強まっている点である。すなわち、高付加価値製品へのシフトを通じて、「高付加価値化指数」がここ数年の間に急上昇している。これが、デフレ傾向が続くなかでも販売単価の上昇を実現させて、企業業績を下支えする役割を果たしている。

  4. 電気機械の高付加価値化は、とりわけ、国際市場での競争が激化している集積回路において顕著である。この背景としては、1990年代後半以降、日本の電機メーカーが、経営資源をパソコン向けDRAMなどの汎用品から、家電等向けシステムLSI など高付加価値製品へとシフトさせてきたことが奏効したことが挙げられる。これは、高度な組み合わせ技術、カスタム化、幅広い国内産業基盤といった、わが国産業の伝統的な強さを再認識させるものであり、今後も集積回路における国際競争力の維持・強化が期待される。

  5. 高付加価値化が電気機械の業績に与える影響を輸出に焦点を当てて試算すると、一定の押し上げ効果が確認される。したがって、当面、販売数量の減少、交易条件の悪化などによるマイナス影響は避けられないとしても、高付加価値化による業績押し上げ効果が働くことにより、電気機械の業績悪化が深刻化することはなく、むしろ底堅く推移する公算が大きいと判断される。電気機械の業績が堅調を維持することにより、わが国企業全体の業績が底割れする事態も回避されると見込まれる。
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