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Business & Economic Review 2007年10月号

【REPORT】
個人消費の先行きをどうみるか

2007年09月25日 調査部 マクロ経済研究センター 主任研究員 小方尚子


要約

  1. わが国の個人消費は、2006年後半に弱い動きがみられたが、2007年に入って底堅さを増す方向にある。もっとも、財別・分野別にみると、好不調のバラツキが大きくなっている。そこで、以下では、消費回復に濃淡が生じている背景を探るとともに、先行きを展望。

  2. 足元の消費の動きを財別に確認しておくと、耐久財は、家電製品をはじめとして総じて堅調な動き。

    一方、非耐久財は、全体としては弱含みの推移。食料については、ほぼ横ばいで推移しているものの、衣料品は初夏の天候不順などの一時的要因もあり、低迷。また、サービス支出は、着実な増加傾向を続け、足元では、旅行、外食などが好調。

  3. 財別の消費を左右する主な要因としては、a.雇用者所得の動き、b.株の値上がり益などの資産効果、c.相対価格(他の財と比べた価格)の動き、d.高齢化に伴う消費内容の変化、が挙げられる。相対価格は財により異なる動きをすることがあるほか、それぞれの各要因から受ける影響の度合いが異なるため、消費の動きにバラツキが生じると考えることができる。

  4. 上記の四つの要因を説明変数として財別の消費関数を推定し、最近の変動要因を定量的に計測してみると、耐久財では、所得の増加と相対価格の下落に対し、消費が大きく増える性質。近年では、所得の伸びが鈍く、そのプラス効果が小さくなっているものの、家電製品を中心とした価格の低下が消費を押し上げる主因となっている。株価上昇によるキャピタルゲインなどが消費を促す資産効果もプラスに作用する一方、高齢化は小幅ながらマイナス要因となっている。

  5. 非耐久財は、必需品が多いだけに支出の変動幅が小さく、基本的には所得の動きに連動して変化する傾向。しかし、価格弾性値も耐久財に次いで大きいため、近年では、世界的な資源高を背景とした繊維、食品、ガソリン等の値上がりがマイナスに働いた結果、弱含みの推移となっている。

  6. サービス支出は、元来「選択的支出」としての性格が強く、耐久財には及ばないものの、資産効果がプラス。さらに高齢者比率の上昇も小幅ながらプラスに作用。相対価格の影響は小さい。

  7. 以上を踏まえたうえで、今後を展望すると、マクロの消費は回復傾向が維持されるものの、財別・分野別には好不調が一段と鮮明になっていくことが予想される。雇用所得の回復は、引き続き緩やかなものにとどまると見込まれる一方、価格の動きが財別に異なる状況が続き、分野ごとに影響の出方が大きく異なる高齢化や資産効果の影響が拡大する方向にあるため。企業としては、こうした財によって異なる消費の動向を十分踏まえたうえで、商品構成の見直しや商品ごとの性質を考慮した価格設定を行っていくことが一層重要になるといえよう。
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