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Business & Economic Review 2006年03月号

【REPORT】
消費税率引上げの影響を考える

2006年02月25日 小方尚子


要約

  1. 本稿では、消費税率引上げの景気面への影響について、過去の経験や海外の動向を踏まえて考察するとともに、望ましい税率引上げの在り方について提言する。

  2. 消費税率が引上げられた際の家計部門への影響を試算すると、消費税率1%ポイントの引上げは、 消費者物価を0.9%押し上げる。これに伴う実質所得の減少により、初年度の実質個人消費は0.6%、 実質GDPは0.4%、それぞれ下押しされる。世帯当たりの負担増加額についてみると、年収下位20% の世帯(平均年収347万円)では月当たり2,000円、年収上位20%の世帯(平均年収1,234万円)では同 4,000円となる。

  3. もっとも、現実の影響は、税率引上げの方法や実施時の経済情勢により異なる。過去の経験を振り 返ってみると、1989年度の消費税導入の際には、物品税の廃止により実質所得の減少が小幅にとどま り影響は小さかった。これに対し、97年度の税率引上げの際には、特別減税の打ち切り(2兆円)、 年金・医療保険改革(1.5兆円)が所得下押しに拍車をかけるなか、年金不安の高まり等から消費者 マインドが悪化し、消費が大きく低迷した。

  4. 海外諸国の動向に目を転じると、わが国の消費税率は、OECD諸国のなかでも実効税率ベースでみ てアメリカに次いで低い。消費税率引上げの際は、所得税減税などと組み合わせて税収中立とした例 が多いものの、ネット増税となった独仏の例に注目すると、景気拡大期と後退局面では増税の影響の 出方に大きな違いがみられた。

  5. 以上からは、消費税増税に伴う景気への影響が、a.景気局面の違いによる所得増加ペースと負担の バランス、b.増税に対する家計の納得感の度合い、により異なることが改めて示唆される。このため、 引上げに際し、a.足元の景気情勢に応じてある程度柔軟に対応できる枠組みを作っておくこと、b.漸 進的に実施し、需要の大幅な変動を抑制すること、が重要であるといえよう。また、a.徹底した歳出 リストラを通じた財政健全化の道筋を提示すること、b.社会保障制度改革により、持続可狽ネ制度へ の信頼感穀zを進めること、が増税実施の必要条件である。
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