コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

救急搬送体制の維持・強化に関する提言

2021年09月03日 山本健人青山温子小倉周人川崎真規富田奈央子


全文資料
概要資料

<要点>
●少子高齢化が進む中、救急搬送の需要増と相対的な供給減によって、現在の公的救急搬送体制の維持は今後難しくなることが想定される。国民の生命を守るために、救急搬送体制の維持・強化に向けた早急な対策が必要である。
●そして、コロナ禍において、国民の医療・救急体制への関心が高まっており、検討を深めるべきである。
●救急隊員(消防吏員)の勤務環境は、24時間勤務や凄惨な場面への遭遇など、心身への影響が大きいことが分かっている。そこで、総務省消防庁を主体として、勤務環境を向上させつつ、救急患者搬送体制の維持・強化を図る各種の取り組みが進められている。
●しかし、生産年齢人口が減少している中で、救急隊員の増員は限定的である。そこで、救急搬送体制維持のために、救急隊員の負荷軽減の支援が重要となる。そして、中でも特に「搬送」、「搬送中の心肺蘇生」における救急隊員の身体的負担を軽減する取り組みについては、十分な政策検討がなされていない。そのため、技術革新によって身体負荷軽減が追求でき得るにもかかわらず、自動化・省力化に資する設備投資が進んでいないのが現状である。
●海外に目を向けると、米国やオーストラリアを中心に、救急隊員の身体的負荷を軽減するための様々な設備が導入されており、日本の当該設備導入はそれらと比較して遅れている。救急隊員の身体的負荷を軽減する取り組みを行うことで、今後さらなる活躍が期待される女性や再任用職員の活躍に対しても効果があると考えられる。そして、救急隊員の身体的負荷軽減が、事故の減少や質の高いケアにつながり、さらなる患者の安全確保につながることが想定される。
●ただ、救急隊員の身体的負荷は現場では「見えにくい課題」となっており、自然に解決されにくく、政策的な介入が求められる。さらに、救急車両の更新基準は自治体によって異なるがおおむね8~10年程度であり、設備を刷新していくためには、10年先を見据えた早急な取り組みが必要である。
●そこで、以下4点について、早急な実施を提言することとした。
 ①中長期戦略の策定:中長期での設備投資戦略策定と設備投資の評価指針を明示すべき
 ②エビデンスの罠の脱却:救急隊員の負荷軽減を議題とした検討会を設置すべき
 ③規制の無限の谷を解消:補助金交付要綱や仕様書に「電動可」を明記すべき
 ④予算制約の壁へ挑戦:ふるさと寄付・民間サービス活用促進に資する通知をすべき

本提言の構成は4章構成であり、第1章では、救急隊員の身体的負荷軽減の促進政策に検討余地がある点に言及し、第2章では、海外と比較して救急隊員の負荷軽減のための省力化が進んでいない状況を紹介する。第3章では、負荷軽減の省力化が、「女性や高齢救急隊員の活躍」や「傷病者の安全」に有用である可能性について示し、第4章で、傷病者の安全に資する救急隊員の身体的負荷軽減のために必要な具体的な政策の方向性を示した。

<本提⾔の帰属>
本提⾔は、株式会社⽇本総合研究所リサーチ・コンサルティング部⾨ヘルスケア・事業創造グループが中⻑期的な観点から社会貢献をしたいとの考えに基づき、客観性・公正性・公平性に留意して意⾒を取りまとめ、提⽰するものである。

<本件に関するお問い合わせ>
マネジャー 山本 健人
E-mail: yamamoto.taketo@jri.co.jp


株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門
山本健人青山温子小倉周人川崎真規富田奈央子
社内アドバイザー:南雲俊一郎
協賛:日本ストライカー株式会社
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ