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働く世代が抱える見過ごされている健康課題への対応の必要性

2021年06月30日 リサーチ・コンサルティング部門 ヘルスケア・事業創造グループ


取りまとめ 田川絢子
メンバー 青山温子・芦沢未菜・川崎真規

*本事業は、⽇本イーライリリー株式会社/バイエル薬品株式会社の協賛を受けて実施したものです。

【提言資料】

<本提⾔の帰属>
本提⾔は、株式会社⽇本総合研究所リサーチ・コンサルティング部⾨ヘルスケア・事業創造グループが、中⻑期的な観点から社会貢献をしたいとの考えから、公正・公平な視点を⼼がけた上で意⾒を取りまとめ、提⽰するものである。

要旨
●わが国の平均寿命は過去最高を更新しており、労働人生が長くなる中で一人ひとりがパフォーマンスを発揮し続けられる社会基盤の構築が求められている。
従業員のパフォーマンス発揮には、プレゼンティーイズム(presenteeism)への対応の必要性も指摘されている。
●プレゼンティーイズムは、欠勤には至っていないが、健康問題が理由で労働生産性が低下している状態を指す。企業の健康関連コストの75%をプレゼンティーイズムが占めるという研究結果もあり、コストとパフォーマンスの両面から課題となっている。
●労働安全衛生法や保険者の取り組み等によって、長時間労働に起因するうつ病・メンタル不調や、メタボリックシンドロームとそれに起因する生活習慣病を中心に、従業員の健康状態の確認・改善・指導が進められてきた。他方で、プレゼンティーイズムが指摘される疾患・症状であっても、こうした政策的対応が十分でない疾患・症状、「見過ごされている」健康課題がある。
●特に、今後の日本の経済成長の一つのドライバーとされる女性について、健康課題に着目したい。例えば、女性に多く見られる片頭痛や、女性特有の疾患・症状である月経随伴症状などについては、日常生活の負担も大きく、労働生産性や就業への影響もあるため、見過ごされている健康課題の中でも先んじて手を付けるべき課題と考える。
●健康課題そのものに対する制度の整備だけでなく、見過ごされがちな健康課題の「みえる化」に注力し、当事者と周囲の相互理解の醸成を図りながら、誰もが心身健康で幸せに働ける職場づくりを行う先進的な企業も存在する。そうした企業は、企業業績・社会的価値の向上への関連性が示されている女性活躍指標が総じて高く、見過ごされている健康課題に対応することで、結果として企業業績や企業の社会的価値を高めることにも寄与している。
●現在、先進的な取り組みを進める企業は、大企業が中心である。今後、日本の企業の多くを占める中小企業での取り組みを推進するためには、政策的な対応を充実させ、パフォーマンスを発揮し続けられるための基盤となる体制づくりがより一層重要となると考える。
●最後に、今後、働く世代が抱える、見過ごされている健康課題に対する取り組みをより強力に推進していくために必要なこととして、以下の3点を提言とする。
 1.見過ごされている健康課題への対応の重要性を、企業経営者・従業員含む国民に向け、理解を促す・認知を高める活動を進める必要がある。
 2.見過ごされている健康課題によって、どの程度の従業員の就業や日常生活に対して影響があるのか。また、効果の高い介入方法は何か。見過ごされている健康課題に対応することが、日本全体に対して、どの程度の経済的効果をもたらすのかを示すエビデンスを充実させる必要がある。
 3.また、見過ごされている健康課題に対する健康支援を実行するために、こうした健康課題に対する専門職の教育体制の構築や、身近に相談できる人材がいる環境づくりといった体制を整備することが必要である。

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