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JRIレビュー Vol.8, No.92

世界経済見通し

2021年08月13日 石川智久


世界経済は回復局面入りが明確化。景気回復の要因としては、欧米を中心にワクチン接種が進んだほか、大規模な政策効果が指摘可能である。財政出動の総額は、先進国で名目GDPの27%、新興国でも7%になると試算される。金融政策についても、政策金利の引き下げだけでなく、多くの中銀が資産買入のほか、非常時対応を実施した。この結果、倒産件数や失業者数が抑制され、各国・地域の立ち直りを促した。

当面の世界経済を展望すると、全体として景気回復は続く見込みである。世界の実質GDP成長率は、2021年が前年の反動から+6.1%、2022年が+4.1%と予想される。もっとも、2020〜2022年の平均成長率は2%台前半にとどまり、新型コロナで受けた著しい打撃からの修復局面と位置付けられる。

当面の世界経済を展望するうえで注目されるポイントとしては、(1)インフレ、(2)ワクチン格差、(3)家計貯蓄、(4)企業の過剰債務問題の4点が挙げられる。まず、(1)インフレは、労働需給がひっ迫しておらず、部品不足なども早晩解消すると見られるため、加速のリスクは小さいとみられる。(2)ワクチン格差は、容易には是正されず、景気回復が遅れる新興国経済が世界全体の回復の重石となる可能性が高い。(3)家計貯蓄が世界全体では名目GDP比で約6%トレンドから上振れており、これが先行き消費に回ることが予想されるが、貯蓄の増加は消費性向が低い高所得者層に偏っているため、押し上げ効果は限定的なものになるとみられる。(4)企業部門では宿泊・旅行業を中心に過剰債務問題が深刻化しており、設備投資の下押し要因になる。このように、当面の世界経済は好調分野と不調分野が入り混じるK字型経済が続く可能性が高い。パンデミック対応から脱却し、通常の経済への回帰を目指す“pandexit(パンデグジット)”が国際会議などで議論されているが、その道は平たんではない。

各国の経済政策をみると、多くの国で財政再建と成長戦略について新たな動きがみられる。まず、財政再建については、一部の国ではすでに政府債務削減に着手している。次に成長戦略については、ワイズスペンディングの名目で、成長分野に巨額の政府資金を投じるなど、大きな政府による産業政策を実施する傾向が顕著となっている。具体的には、人材、デジタル、環境分野などに巨額の政府資金を投入している。もっとも、単なる量的拡大ではなく、分野を絞っていることや、原資は専ら増税であるなど、財政に配慮する姿勢は一定の評価が可能である。

今後の世界経済のリスクとしては、①財政・金融政策の出口戦略の失敗、②「大きな政府」路線が野放図なものに変質、などが挙げられる。
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