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ビューポイント No.2021-003

米中新冷戦にどう向き合うか-製品競争力の強化とアメリカでの需要獲得を

2021年05月25日 牧田健


バイデン米大統領は、日本をはじめとする同盟国との関係を強化し、共同で中国の覇権主義的な動きに対峙していく方針を打ち出している。民主主義国家で価値観を共有し、わが国の安全保障を担っているアメリカは、今後わが国に「踏み絵」を迫ってくる可能性がある。一方で、人口が減少するわが国が経済成長していくためには中国の成長力を利用していく必要もあり、闇雲にアメリカに追随することも得策とは言えない。そこで、さまざまなデータから、米中新冷戦の当面の行方を探り、そのなかでわが国が採るべき戦略を考察していく。

わが国の対中国・香港向け輸出依存度はアメリカと比べ著しく大きく、対中関係悪化に伴う経済への悪影響は無視できない。他のアジア諸国・資源国の経済はわが国以上に中国依存度が高く、経済面での悪影響を踏まえると、アメリカと同じ調子で中国に対峙するのは困難である。

こうした状況を踏まえると、アメリカは同盟国との結束の綻びを露呈させかねない「踏み絵」を迂闊には迫ることはできないだろう。アメリカ自身も、中国への対抗姿勢を強めてはいるものの、現時点では、最先端ハイテク製品以外で対中貿易を圧縮している様子はうかがえず、安全保障と経済を切り分けている。

一方、中国も、以下の3点を踏まえると、アメリカと決定的な対立に至るような展開は避けたいというのが本音と推察される。第1に、アメリカ向け輸出は依然大きく、アメリカ市場を閉ざされた場合、デフレ圧力が増大するのが避けられない。第2に、人口減少が視野に入るなか、内需の先行きも安泰とは言えず、2020 年代半ばには5%成長も覚束なくなる可能性がある。第3に、軍事費はアメリカの3分の1に満たず、現時点で相応の実力差がある。「台湾有事」についても、米中双方の政治的な思惑からの喧伝により、実態以上に懸念視されている可能性がある。

こうしたなか、中長期的にはともかく、当面は米中の対立が抜き差しならない状況にまで先鋭化することはなく、経済的な悪影響も最先端半導体分野に限られると推察される。もっとも、アメリカの軍事的な優位性が脅かされる、あるいは、中国の対外スタンスがこれまで以上に強硬になるような展開に至れば、米中の対立が想像を超えてエスカレートしていく可能性は排除できず、不測の事態を想定しておくことはリスク管理上不可欠と言える。

その備えとして、第1に、わが国製品・サービスの競争力をこれまで以上に高めていく必要がある。中国にとってなくてはならず、かつ、他国では代替困難な製品・サービスであれば、中国も迂闊にわが国に対する敵対行動はとれないはずである。研究開発投資等を通じて、他国では代替しにくい製品を開発し続けることが重要だろう。

第2に、中国以外の国々での需要を掘り起こしていく必要がある。なかでも、アメリカは、今後対中輸入依存度を低下させていく可能性があり、信頼感のある供給者として改めて存在感を高める絶好の機会といえる。その際には、わが国と輸出競合度の高いドイツや韓国の政治状況・企業動向を注視していく必要がある。インバウンドについても、中国リスクかつ東アジアへの過度な依存状況からの脱却に向け、将来的にはアメリカや欧州からの訪日客を増やす取り組みが欠かせない。

第3に、わが国は欧州諸国等と連携して、適宜米中の仲介役を担わなければいけない。そのうえで、政府は、わが国企業が米中新冷戦に十分に対応できるよう、中国向けに輸出できない製品、使用できない中国製品について、早急に確定していく必要がある。また、外需依存度の上昇を極力抑制すべく、デジタル化の加速や労働市場改革などを通じて内需を底上げしていくことも欠かせない。


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