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JRIレビュー Vol.5,No.89

新型コロナ禍が促すデジタル・ガバメントへの取り組みーわが国に求められる行政改革の意識とガブテックとの共創

2021年03月22日 野村敦子


デジタル・ガバメントは、「公共の利益を創出するためにデジタル技術を使用すること」(OECD)を意味する。行政サービスへのITの利用を意味する「電子政府」のより進化した概念であり、市民や企業など多様なステークホルダーを巻き込む考え方は、オープン・ガバメントの概念とも深く関係する。
デジタル技術は、既存のビジネスモデルの創造的破壊に取り組む企業やビジネスモデルの登場を促している。「Xテック」と呼ばれる動きであり、デジタル・ガバメントの分野では「ガブテック」が台頭している。政府や地方自治体のなかには、ガブテック企業とのオープン・イノベーションを通じて、自らのデジタル変革に取り組む動きも出てきている。

わが国では、2001年のe-Japan戦略で「2003年度までにすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」という目標が示され、20年以上にわたり行政のデジタル化が推進されてきた。しかしながら、2018年度における国の行政手続きのオンライン化率(種類別)は11.5%、オンライン完結率は7.5%にとどまり、国民が望むデジタル・ガバメントは実現できていないのが現状である。
デジタル・ガバメントに関する国際評価でも、わが国の評価は決して高くない。その背景として、行政内部のプロセスのアナログからデジタルへの変換である「デジタイゼーション」が主として進められ、デジタルを経済や社会に浸透させ新たな価値の創造やビジネス・社会の変革を促す「デジタライゼーション」では後れを取っていることが指摘できる。

今回の新型コロナ禍で、非接触・非対面のサービスへの移行が要請されたものの、これに対応できていないどころか、過去の非常時の経験もほとんど活かされておらず、必要な人に必要な支援を迅速に提供できない実態が明らかになった。一方、デジタル・ガバメントの取り組みが進んでいる諸国では、平時からの利用が進んでいることから、大きな混乱もなく、各種オンラインサービスや支援策の円滑な実施が可能となっている。こうした状況を受け、日本政府は官民のデジタル化を推進する司令塔組織としてデジタル庁を創設し、デジタル・ガバメントに本腰を入れて取り組む方針を明らかにした。
新型コロナ禍では、デジタル・ガバメントばかりでなく、ガブテックの取り組みも加速している。国連も、政府が危機の影響を緩和し、人々のニーズに応える効果的な方法として、政府・地方自治体とガブテックとのパートナーシップを評価している。

デジタル・ガバメントの先進事例として、デンマークと韓国についてみていくと、両国にはいくつもの共通点がある。具体的には、①司令塔組織を頂点とし、国と地方自治体が一体となった推進体制の構築、②国や地方自治体に対し技術的な支援を行う専門家組織の設置、③ワンストップポータルや行政データの共同利用システムなどの共通基盤の整備、④行政のトップや職員の責務、国民の義務などを規定する法的な根拠、⑤進捗状況や成果の把握・分析・公表と次期計画への反映、⑥成長市場としてのガブテックの育成と公共調達の改革、などが挙げられる。

わが国においても、官民のデジタル化を推進する司令塔組織としてデジタル庁がようやく実現しようとしている。その実効性を高めるためにも、デジタル・ガバメント先進国の取り組みに倣い、①トップのコミットメントのもとでの行政改革との一体的な推進、②地方自治体のシステム構築の支援と標準化・共通化の徹底、③国民に対する透明性と説明責任の徹底、④デジタルIDとしてのマイナンバー制度の有効活用、⑤公共調達の改革とガブテック市場の育成、について意識的に取り組むべきである。
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