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中国化が進む香港国際金融センター米中金融デカップリングと中国市場特化の可能性

2021年02月15日 野木森稔


香港は国際金融センターとして急成長し、2000年代以降その地位を確固たるものとした。香港は中国金融資本市場の開放、人民元国際化の動きなど、中国の経済成長に伴う金融ニーズを取り込むことで、中国は香港のグローバルマネーを集める調達機能を積極的に利用することで、それぞれ経済成長を遂げてきた。

しかし、2020年、香港は国安法施行という予期せぬ試練を迎えることになる。同法によって香港のビジネス環境の透明性が低下するとの懸念が急速に高まっている。さらにアメリカによる制裁や中国投資への規制強化も追い打ちとなる。中国と香港は互いの経済成長を支えあってきたが、それは国際金融を通じての成功であった。たとえこの二つの経済関係が良好であっても、それを支えるグローバルマネーの流入が細れば、好循環は続かない。グローバルマネーの最大の出し手であるアメリカとの関係に問題が生じることは香港とって大きな痛手となる。

香港は国安法、米中対立の悪影響により、国際金融機能を徐々に低下させている。そうしたなか、足元では「粤港澳大湾区」構想の推進など、中国との一段の関係強化により難局を打開しようとする動きがみられる。今後、香港は「一帯一路」沿線国との人民元貿易決済など人民元国際化推進の担い手になるなど、中国市場に特化した国際金融センターとしての発展を目指すことも十分想定される。

しかし、こうした中国市場に特化した発展は、香港国際金融センターの本来の姿とは異なる。長期的にはグローバルマネーの流入は細り、香港はもちろん、中国やアメリカにとっても望ましい姿とはいえない。米中両国は、こうした視点に立って冷静に落としどころをみつけるべきであるが、互いに譲歩出来ず、香港を挟んで前進も後退も許されない袋小路にある。香港が国際金融センターとしての本来の姿を維持することが出来るか否かは、米中対立の行方に大きく左右されることとなり、かつてない不確実性のなかにある。
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