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リサーチ・レポート No.2020-035

マクロ統計から考える企業のキャッシュ保蔵行動-アベノミクス以降の低成長を繰り返さないために

2021年02月04日 安井洋輔


アベノミクス以降、景気拡大が続いたにもかかわらず、2%を上回る経済成長と2%インフレという政府目標は実現しなかった。様々な要因が考えられるものの、企業が創出した付加価値を賃金支払いや設備投資に十分に回さずに、現預金としてため込み続けたことが大きく影響している。

なぜわが国企業は、景気拡大期にあっても、キャッシュ保蔵に走ったのであろうか。過去の経済危機において厳しい資金繰りを余儀なくされた記憶と、わが国の成長期待の低さが指摘できる。

今後、アベノミクス以降の低成長を繰り返さないためには、企業が積み上げた現預金を成長につながる設備・人的投資に振り向け、潜在成長率を高めていくことが求められる。このうち、設備投資については、とりわけ全く新しい製品・サービスを生み出す創造型R&D投資と、省力化・効率化を実現するソフトウェア投資に注力することが重要である。

わが国のR&D投資は、人口減少下では投資の縮小を招きやすい、既存製品の改善を追求する品質向上型R&D投資に偏っている。今後は、人口変動に左右されにくい、創造型R&D投資に資源を振り向けていくことが重要であり、そのためにはスタートアップ企業の育成が欠かせない。一方で、創造型R&Dに専念できる人材を増やすために、ソフトウェア投資を積極化し、単純・定型的な業務を「機械」に任せていくことも必要である。

こうした動きを後押しするには、起業や資金調達環境等を整備していくことで創造型R&D投資に注力するスタートアップ企業を支援していくほか、ソフトウェア投資を促していくために、ジョブ型雇用への転換や転職市場の整備などの労働市場改革も推し進めていくことが求められる。また、政府・日銀が、マクロショック発生時に、コロナ禍で実施したような強力な資金繰り支援を行うと約束することで、企業にとっての「保険」提供機能を強化することも重要である。
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