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JRIレビュー Vol.2,No.86

デジタル化による雇用の構造変化ー官民を挙げた労働移動の円滑化とデジタル人材育成が急務

2021年01月27日 安井洋輔


新型コロナ収束後にデジタル技術に支えられた「新しい日常」が展望されるなか、多くの企業が業務プロセスや事業そのもののデジタル化に取り組んでいる。菅内閣も、2021年9月にデジタル庁を設置し、行政のデジタル化を強力に推進するとしている。こうした動きを背景に、今後わが国の生産構造は大きく転換し、雇用機会も変化する公算が大きい。

そこで、こうしたデジタル化による雇用の構造変化について、産業連関表などを用いて試算すると、産業別では、「情報通信」が+76.8%と大幅に増加する一方、「対事業所サービス」が▲13.3%と大きく減少するほか、「運輸・郵便」が▲6.9%、「商業」が▲2.3%とそれぞれ減少する結果となった。

また、職業別でみると、「システムコンサルタント・設計者」が+38万人、「ソフトウェア作成者」が+14万人、「その他の情報処理・通信技術者」が+8万人ほど増加する結果となり、労働需要の増加は情報通信サービスの専門家に集中することが分かった。他方、「自動車運転従事者」が▲11万人、「販売店員」が▲10万人、「ビル・建物清掃員」が▲9万人減少するなど、「運輸・郵便」や「商業」、「対事業所サービス」などの職業を中心に労働需要が大きく下振れすることになった。

こうした試算が示す職業別雇用者数の変化は、デジタル化に直面して企業や家計が最適に反応した結果として起こるものである。このため、労働需要が減少する職業から、情報通信サービスの専門家などの需要が大きく増加する職業に労働力が円滑にシフトすることが経済厚生の観点から重要と考えられる。

したがって、今後わが国は、失業なき労働移動の活発化に向けて、①デジタル・スキルを身に付けるための職業教育訓練の強化、②転職の不確実性を減らすためのジョブ型雇用制度の採用、③情報の非対称性を解消するための職業・賃金情報の見える化、④デジタル化によって新たに生まれる職業を増やすためのスタートアップ支援などが求められよう。
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