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CSRを巡る動き:食品ロスに求められる消費者とのコミュニケーション

2021年02月01日 ESGリサーチセンター


 2020年10月1日、「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)が施行されました。食品ロスは、持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(2015年国連総会決議)でも言及された世界的な問題であり、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」でも焦点が当てられています。日本においても食品ロスの実態は年間約612万トン、毎日一人当たりお茶碗一杯分のご飯を捨てている計算になるとされます。こうした問題に、多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進することを目的としたのが本法です。

 折しも、本法の施行までに新型コロナウイルス感染症が発生、フードチェーン全体に新たなフードロスの問題が発生する事態となりました。学校休校による牛乳の廃棄や、旅行や外食の自粛に伴う業務用野菜・肉の廃棄など、これまでにないケースで食品ロスが発生する事態となり、事業者には、withコロナ下での食品ロス問題に対応する必要が生じました。
 消費者においても、「新しい生活様式」に伴い食品ロス増加の場面が生まれています。外食が減る一方、家庭での内食の機会が増えたことに対し、消費者庁はテイクアウト等の利用に伴う食中毒予防への注意喚起を行いました。調理直後とは必ずしも言えないものを食べる機会が増え、食中毒にかかるリスクが高まる懸念が背景にあります。家庭での内食が増えると、買いだめしたものを食べきれずに捨ててしまうという行動も危惧されています。

 食中毒に代表される食品の安全性確保については科学的根拠に基づく厳格なリスク評価が行われています。FAO/WHOでは、2020年6月、Draft Guidance of Microbiological Risk Assessment for Foodを発表し、微生物リスク評価の新たなガイダンス文書作成を推進しています。科学的な知見を蓄積し、リスク評価手法を高度化することで安全性を高めようとするものです。
 このリスクの考え方は、悪影響の可能性をゼロにできないということを前提とし、科学的に十分安全だろうという閾値幅(マージン)を取ることを選択します。病気に用いる薬や農業で用いる農薬などでも、一般に使用されるようになるまでにはリスク評価を受けて安全性を確認しています。
 しかし、消費者の理解が広がらないことには安心にはつながりません。食品添加物の健康へのネガティブなイメージはその代表例でしょう。かつて、一部の食品添加物が人の健康に影響を与えたことが明らかになったことから、食品添加物全般が敬遠される傾向が生まれました。しかし、食品添加物により食中毒発生を抑え、消費期限を延長し、食品ロス削減を実現する、というポジティブな側面も重要性を増しています。さらに、食品ロス以外の観点でも、常温での食品保存が可能となれば、冷蔵・冷凍に必要なエネルギー消費に伴う温室効果ガスを削減することに繋がりえます。

 食品ロスの削減には事業者のみならず消費者との連携が必要であることは、冒頭の食品ロス削減推進法においても触れられています。食品ロス削減の実現には、これまでネガティブなイメージを持たれていた対象にも改めて光を当てなおし、消費者の理解と協力を引き出す必要もあるでしょう。このためには、得られるだろう効果、例えば、食品廃棄量の減少や温室効果ガスの発生抑制を目に見えるかたちで提示することが求められます。このようにして、ネガティブなイメージを安心に変えるようなコミュニケーションを進めることも、事業者の果たす社会的責任のひとつと言えるでしょう。


本記事問い合わせ:古賀 啓一
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