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日本総研ニュースレター 2020年9月号

金融リテラシーの向上は女性活躍の次なる課題

2020年09月01日 小島明子


男女格差に課題が残る一方、家庭との両立には高い意欲
 男女間の格差を示すジェンダー・ギャップ指数が2019年12月に世界経済フォーラムから発表され、日本は前年の110位から121位153カ国中まで順位を下げる結果となった。この指数は、経済、政治、教育、健康の4つの分野から評価され、日本は、経済115位(昨年117位)、政治144位(昨年125位)、教育91位(昨年65位)、健康40位(昨年41位)であった。経済と政治という社会的な活動における順位の低さを見れば、既に社会に出ている女性はもちろん、次世代の女子が活躍しやすくなる施策を考えなければならないことが分かる。
 日本総研では、全国の中学生、高校生、大学生計1,000人に対して、「若者の意識調査(報告)ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識―」(以下「本調査」を今年5月に実施した。本調査で、就職先として重視する条件(13位の合計)を尋ねたところ、「給料が高い」に次いで2番目に支持を集めた項目は、「仕事と家庭の両立がしやすい」であった。特に女子でその傾向が強く、仕事と家庭の両立に対する関心の高さがうかがえた。
 意欲の高い次世代女子の活躍を推進するには、職場における仕事と家庭の両立支援を充実させていくことが、引き続き重要であるといえる。

「結婚後の共働き」にも意欲が高い
 将来、結婚をして子どもを持ったときの理想の働き方として、「自分が働いて、結婚相手が主に家事を担う」「自分が主に家事を担い結婚相手が働く」を本調査で選んだ若者は、それぞれ14.2%、6.8%にとどまった。一方で、「共働き(自分・結婚相手共に働く)」は44.1%と最も多く、特に女子では52.0%と、男子(36.2%)を大きく上回った。
「共働き」を選んだ比率を学生別にみると、大学生(女子)が60.0%と最も高く、高校生(女子)が49.3%、中学生(女子)が44.0%と続く。年齢が上昇するに従って、女子の共働きへの意欲は高くなる傾向が見られる。
 共働きを選ぶ理由として、全体では、「男女問わず経済的に自立できることは大切だと思うから」(70.7%)が最も多く、男子(65.7%)より女子(74.2%)の方が多い。女子においては、伝統的な価値観が結婚後の就労継続を阻害していると考えられることが多いが、今回の調査の結果から、既にそうした価値観は弱まり、女子の経済的な自立への意欲が高くなったことが分かる。

活躍を支えるのは経済基盤、金融リテラシー向上は必須
 女子の経済的な自立への意欲が高いとはいえ、それはあくまでも「稼得」に対する意識である。一方で、消費やライフプランの検討に欠かせない「金融リテラシー」については心もとない結果が出ている。
 本調査では、金融や経済への関心を持つ(「とても関心がある」「やや関心がある」)割合は、女子(35.4%)が男子(46.0%)を下回った。また、金融や経済についての授業を受けたことがある若者のうち、理解できたと感じている(「よく理解できた」「だいたい理解できた」)割合も、女子(51.5%)が男子(64.8%)より低い。女子は男子に比べて、金融や経済への関心が低く、授業への理解度も低いのである。
 金融や経済の知識をきちんと身に着け、ファイナンシャルプランニングができれば、長期的な視点で、収入と支出の管理を通じた不要な出費の削減や、投資を通じて資産を増やすことが可能となる。経済基盤が安定すれば、余裕資金を活用して、仕事から得られる収入を引き上げるための自己投資もできる。女性が金融リテラシーを向上させることは、節約という観点だけでなく、能力の向上、つまり活躍を進めるために非常に重要な役割を担うと考えられる。
 国内では、男性に比べ女性の方が経済的な問題で弱者になりやすいという状況はあまり改善が進んでいない。主な原因の1つである働く男女の賃金格差は、引き続き社会的課題として解消を進めるべきであるが、金融リテラシーであれば今すぐ、自分の裁量で身に付けることができる。
 「学習指導要領」が改訂され、2022年度からは高校の家庭科の授業で金融教育が行われる予定である。性別にかかわらず、経済基盤が確立しなければ、社会での一層の活躍は難しい。今後、次世代の女子の活躍を推進する上でも、女子の金融リテラシー向上への関心が高まることを期待したい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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