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2008年10月03日

補助金削減論議の深化に向けて

【要 旨】
 政府の歳出の無駄削減への要請が強まるなか、最大の対象の1つとなっているのが、27.6兆円(平成19年度予算ベー ス)に及ぶ国の補助金等である。補助金等に関しては10兆円規模の無駄削減が出来るという指摘もあれば、一方、削減はもはや限界との声もある。議論は定量 的な裏付けを伴ったものとなっていない。そこで、本レポートは、定量的な議論を行うための前提として、主に「平成19年度補助金総覧」における個別補助金 の再集計を通じて複雑で分かりにくい補助金等の内容整理を行うことで、削減検討対象のあぶり出し作業を行った。なお、ここでの議論においては、概ね次のよ うなものを無駄と定義した。実際の需要に比べ立派過ぎる道路や橋梁整備など公共事業に対する国から地方への補助金等のうち需要を超えた部分、必要不可欠な 仕事が見出しにくいまま天下りのためにあるような公益法人への補助金等、および、裕福な人への社会保障給付に対する補助金等である。社会保障および教育関 係については、議論が大きく分かれるためここでは対象から排除した。主な結果は、次の通りである。
1.  一般会計の補助金等約23.0兆円のうち17.2兆円は、厚生労働省と文部科学省の2省による。特に地方公共団体向け補助金等、それぞれ11.8兆円、1.9兆円は、社会保障関係費や義務教育費国庫負担金などであり、ここでは対象から除いた。特別会計からの補助金等4.6兆円のうち厚労省所管の年金特別会計から地方公共団体に向けられた0.5兆円などについても同様に対象外とした。
2.  上記2省以外の一般会計および特別会計から地方公共団体に向けられた補助金等は、国土交通省、農林水産省などの社会資本整備における補助事業への国庫負担分が主である。補助事業を廃止し、財源を国から地方に一括交付した上で、国の定めた仕様ではなく地方独自の社会資本整備を行えば、費用を削減出来るとの指摘がある。こうした補助事業への国と地方の財源負担は7.83兆円である。7.83兆円をベースに、個別事業の精査を通じて、削減可能か否かを特定していく必要がある。
3.  地方公共団体向け以外の補助金等は、一般会計と特別会計合わせて8.6兆円ある。政府の集計によれば、主な内訳は、認可法人向け1.7兆円、独立行政法人向け3.2兆円、国立大学法人向け1.3兆円、民間団体等向け2.3兆円とされる。これらのうち、国立大学法人向けは、ここでの無駄削減という趣旨とは合致しない。認可法人向けについても、国家公務員が加入する社会保険である国家公務員共済組合への国の雇用主としての保険料負担分などであり、やはり大幅な削減は難しい。
 独立行政法人向けは確かに3.2兆円あるものの、内訳をみると、交付先上位には宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究開発機関や旧日本育英会など国から補助金等を受けても受益は当該法人というより国民に及ぶいわば受益仲介型機関が多く含まれる。無駄であるとして廃止するか否かは議論の余地があろう。すると、これら2つのタイプに属さない、無駄である可能性がこれら2つのタイプより高い独法が受けている補助金等は合計1.25兆円となる。これは検討対象となり得るだろう。「補助金総覧」のみならず国会への提出資料などにおいて、「民間団体等」として集計されているもののなかに、社団法人、財団法人、社会保険関係法人などが含まれており、削減検討余地がある。今後、突っ込んだ議論が不可欠である。検討対象は0.45~0.55兆円程度となろう。
4.  ここで掲げた検討対象に潜む無駄削減を実現するには、予算削減や会計検査など現行の枠組みでは限界がある。国と地方の役割分担や社会保障制度のあり方などを根底から見直していくなかで、補助金等の削減を図っていく抜本的取り組みが必要である。
【目 次】
はじめに
1章 補助金等の概要


(1) 一般会計-厚生労働省と文部科学省で17.2兆円と全体23.0兆円の4分の3
(2) 特別会計-社会資本整備関係が全体4.6兆円のうち1位、次いで年金
(3) 交付対象先-地方公共団体に19.0兆円、その他に8.6兆円

2章 地方公共団体向けの検討

(1) 一般会計-劇的削減は出来ない厚生労働省と文部科学省
(2) 一般会計-補助事業見直しが対象に
(3) 特別会計-ここでも補助事業

3章 独立行政法人をはじめとするその他向けの検討

(1) 認可法人-殆どが公務員の社会保障関係費
(2) 独立行政法人
(3) 民間団体等-財団法人や社団法人はこのなかに


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