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リサーチ・レポート No.2020-033

金融ビジネスの動向と今後の注目点(2020~21年) ~ 金融の「真価」が問われた一年、来年はさらなる「進化」の年に ~

2020年12月24日 佐倉勲野村拓也谷口栄治大嶋秀雄


2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界全体が大幅なマイナス成長を記録した。実体経済が落ち込むなか、金融仲介機能を発揮できるか、当局、金融機関を含む金融セクター全体が、その「真価」を問われた1年であった。

本年、金融セクターは、主に2つの試練に直面した。1つめは、3月に起きた金融市場の混乱である。欧米でロックダウンが実施されたことを受けて、世界的に株価が急落し、債券スプレッドが急拡大した。これに対して、日米欧を始めとする主要中銀は、潤沢な資金供給を実施し、リーマンショック時と比較して早期に市場の混乱を収束することに成功した。2つめは、企業の資金繰り対応である。経済活動の低迷により資金繰りが逼迫した企業の資金ニーズに、各国金融機関は、政府支援策も活用しながら積極的に対応し、邦銀の法人向け貸出残高は前年同月比+8%超に達した。こうした支援の結果、わが国では足元企業倒産は抑制されており、金融仲介機能を発揮する金融セクターの役割は、一定程度果たされた。

一方、金融ビジネスの観点でみれば、個人向けについては、消費活動の低迷から、消費者ローン業務や、クレジットカードなどの決済業務が大きなマイナス影響を受けた。一方で、キャッシュレス決済の普及に加え、若年層によるオンライン投資の拡大といったこれまでにない変化もみられた。法人向けについては、貸出残高が増加する一方で、利鞘は縮小傾向が持続した。また、欧米を中心に、債券や株式に係る引受業務、セールス&トレーディングなどのマーケッツ業務が活況を呈した。

2021年も引き続きコロナ危機対応が最重要課題である。感染再拡大への短期的な対応に加え、異例の危機対応の結果生じている、①株式市場や債券市場の過熱感、②企業の過剰債務、などの金融システムに潜在するリスクへの対応が求められる。政府・当局は、財政・金融政策の正常化を展望しながら、これらのリスクへの対応を進める必要がある。また、金融機関も、政府と連携した資本性資金の提供や、事業再編のサポートなど、取引先企業に対して、これまで以上に幅広いソリューションの提供が求められよう。また、経営難に陥った企業に係る不良債権処理への対応も必要になる可能性がある。

コロナ対応以外でも、金融ビジネスの潮流は着実に変化している。世界的には、①中央銀行デジタル通貨(CBDC)に係る議論が進展しているほか、②グリーン・リカバリーの動きが広がるなかで、サステナブル・ファイナンスの重要性が高まっている。また、③選別が進むFinTech企業との協働・連携も引き続き重要なトピックである。さらに、わが国では、④厳しい経営環境が続く地方銀行の再編論議が活発化しており、⑤銀行や銀行グループに対する業務範囲規制が緩和される見通しであるほか、⑥国際金融センターの実現に向けた議論も進展している。

なおわが国は、欧米と比較して、コロナ危機対応を間接金融に依存せざるを得なかった。これは、わが国金融システムが抱える構造的な脆弱性の一つである。今後も、資本市場活性化に向けて、規制緩和を含めた抜本的な対策が必要である。

2021年は、金融機関が、コロナ対応とともに、こうした国内外の中長期的な環境変化を捉えたビジネスモデルの「進化」を求められる一年となろう。

金融ビジネスの動向と今後の注目点(2020~21年) ~金融の「真価」が問われた一年、来年はさらなる「進化」の年に~(PDF:2,377KB)
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