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【次世代交通】
ラストマイル自動移動サービスの安全性確保の考え方

2020年12月08日 逸見拓弘


 日本総研は2020年11月4日(水)に、ラストマイル自動移動サービス(地域内あるいはその近隣地域の予め定められた経路を運行する、住民が日常の移動のために利用する自動移動サービス)の実装プロセスの定型化を目指す研究会「RAPOCラボ」を設立した(注)。RAPOCラボでは、「ラストマイルに特化した移動サービスの運営・維持に関する検討」と「自動運転の走行環境の安全性確保に関する検討」の2テーマで検討を進めている。本稿では、後者の「自動運転の走行環境の安全性確保に関する検討」について紹介したい。

 公道におけるラストマイル自動移動サービスの走行安全性確保については、2つの観点からの検討が必要になる。1つは、車両側に着目した「自動運転車両システムの安全性確保」(以下、車両側の安全性確保)で、もう1つは道路側に着目した「自動運転の走行環境の安全性確保」(以下、道路側の安全性確保)だ。現在は、もっぱら車両側の安全性確保に着目した完全自律型の自動運転車両の開発がメーカーを中心として進められている。政府も、2020年7月に「ラストマイル自動運転車両システムのガイドライン」(国交省自動車局)を発表するなど、車両側の安全性確保に関する枠組みの整備を進めている。一方で、安全性に万全を期すならば、車両側だけでなく道路側の安全性確保も並行して検討するほうが望ましい。なぜなら、実際の走行環境では、私有地や死角からの車両や歩行者の飛び出し、後続車両の強引な追い越しなど、車両側だけでは安全性を確保しきれないリスクが存在するためだ。このため、万が一にも不慮の事故が発生しないように、車両側だけでなく同時に道路側の安全性確保も考えていくことが重要となる。

 道路側の安全性確保については、現場の置かれた状況によって異なることから、国も現場ごとに確認し、判断をすることとしている。このため、事業者はそれぞれの現場で運輸当局・交通当局両者の判断を仰ぎながらの調整が必要になる。この際、現状では、道路側の安全性確保に定型的なフレームワークが存在しないため、各現場でその都度の対応が必要となっており、効率面で問題がある。したがって、もし、地域横断的な安全性評価のフレームワークが存在すれば、リスクの高い箇所から優先的に安全対策を講じるなど、効率的な安全性確保が可能になることが期待できる。

 このような観点から、RAPOCラボでは道路側に着目した安全性評価のフレームワークを策定することを目指して検討を進めている。道路側に着目すると、自動運転車両の走行リスクは、「①道路構造×②自動運転車両進路」を1単位として安全性評価を行っていくことができる。例えば、「①十字路×②右折」⇒「①単路(右カーブ)×②直進」⇒「①T字路×②左折」⇒……、をそれぞれ1単位とみなして安全性評価をしていくのである。このような手法にしたがって自動運転車両の走行経路を一通り安全性評価していけば、走行経路上で特に注意すべき場所が明らかになり、リスクが高い場所から優先して適切に安全対策を施せるようになる。

 RAPOCラボで検討する安全性評価のフレームワークは、交通安全を配慮したまちづくりを進める上でも有効だろう。なぜなら、特定の道路構造において交通事故のリスクが高いことが明らかになれば、なるべくそのような道路構造を作らないように都市設計をすることが可能になるからだ。このように、RAPOCラボは、ラストマイル自動運転の実装を目指している事業者だけでなく、将来の自動運転社会を見据えた道路環境のアップデートやまちづくりに関心を有する企業にとって興味深いものとなるはずだ。参加企業は日々増えている。多くの企業の参加をお待ちしている(関心のある方は、下記までご連絡ください)。

(注)ニュースリリース「ラストマイル自動移動サービス「地域への実装」の研究会を設立」(日本総研、2020年11月4日発表)


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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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