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JRIレビュー Vol.1,No.85

世界経済見通し

2020年12月24日 石川智久


世界経済は、新型コロナの感染拡大により、2020年前半に大きく落ち込んだ後、年央以降は持ち直しに転じた。IMFは6月時点の見通しで2020年の成長を▲5.2%としていたものの、10月の改定見通しでは▲4.4%と上方修正しており、過度な悲観論は後退しつつある。地域別に回復状況をみると、他国に先駆けて感染拡大を封じ込めた中国が比較的順調に持ち直す一方、感染が再拡大している欧米は足許で鈍化している。

今回の景気後退の特徴として、①雇用への甚大な悪影響、②所得格差の拡大、③不況下の株高、④過去最大レベルの財政・金融の拡大などが指摘できる。大恐慌以来の不況は、各国の政策総動員によって下げ止まっているものの、様々な分野で二極化が進展している。

当面の世界経済を展望すると、新型コロナは2021年後半に収束し、ワクチンも徐々に実用化されるとの想定のもと、足許の回復傾向は続くと見込まれる。もっとも、当面は欧米を中心に感染再拡大への警戒感が続くなか、回復ペースは緩慢なものにとどまるとみられる。2021年は前年の反動から+5.2%、2022年は+3.3%を見込むものの、2020〜2022年の平均成長率は約2%に過ぎず、従来基準で言えば景気後退に相当する状況となろう。

当面の世界経済を展望するうえで注目されるポイントとしては、①モノの動きは比較的早期に回復するものの、ヒトの交流は回復が緩慢、②5G投資拡大などを背景にハイテク部門は堅調、③グリーンリカバリー関連産業の投資拡大が世界経済の成長にプラスに寄与、などである。

世界経済の中期的なリスクとしては、新型コロナ対応によって債務を急増させている政府部門と非金融部門における債務バブル崩壊の恐れが指摘できる。新型コロナ収束後に、景気に悪影響を与えずに両部門の債務を削減するためには、①債務処理を進めるための特別会計の導入、②債務削減の工程表の作成、③債務を急増させた非金融企業部門に対する的を絞った支援、などの対応が重要になる。また、世界中がコロナ禍で苦境にあるなか、自国だけでは十分に対応できないことも考えられるため、リーマンショック後のようにG20で協調して対策を進めることも必要である。
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