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JRIレビュー Vol.1,No.85

アメリカ経済見通し

2020年12月24日 井上肇


アメリカ経済は、新型コロナ禍のなか、経済活動の段階的な再開に合わせてペントアップ需要が顕在化し、2020年7〜9月期に急回復した。もっとも、足許の景気回復状況は、業種や労働者の属性の違いによる二極化が鮮明である。バイデン新政権の当面の最優先課題は新型コロナへの対応となるが、中長期的にも現在のアメリカの分断を生み出している経済格差の是正を含め、国内外で対応すべき課題が山積している。

2020年10月以降、新型コロナの第3波に見舞われるなか、複数の州が行動制限を強化したものの、個人は感染防止策を講じながら一定の外出を続けている。政府の所得支援策やEコマースシフトなどにも支えられて、個人消費は底堅さを維持する公算が大きい。2021年にかけては既往の経済対策効果の剥落が予想されるなかで、同年春までに1兆ドル規模の追加的な対策が成立する見通しである。

大統領・議会選挙の結果、ねじれ議会が継続することで、民主・共和両党の意見が対立する政策の実現は難しくなった。財政政策では、バイデン氏が掲げる増税は実現せず、インフラ投資など歳出拡大策の規模は縮小される公算が大きい。一方、大統領権限が強い外交・通商政策は、国際協調路線に転換するとみられる。ただし、内向き志向は変わらないほか、対中強硬姿勢は維持される見込みである。

金融政策については、ディスインフレ傾向の長期化と雇用回復の遅れが予想されるなか、早期の正常化は見込み難い。利上げの開始は、FRBが柔軟な2%のインフレ目標を達成したとみなせる状況となる2024年以降と予想される。

以上を踏まえ、アメリカ経済の先行きを展望すると、当面は行動制限や外出自粛ムードが重石となるものの、金融・財政政策に支えられて、緩やかな回復が続くと予想される。新型コロナワクチンの普及が期待される2021年後半には、経済活動がコロナ禍前の水準を回復し、2022年入り後も暫くは高めの成長ペースが続く見通しである。少なくとも2022年秋の中間選挙後までは、増税も大規模な歳出拡大も実現せず、景気の回復ペースやコロナ禍前から存在している経済格差の構造が大きく変わることはないだろう。

リスクは引き続き景気下振れ方向である。ワクチンの普及の遅れなどによりコロナ禍が想定以上に長引いた場合、資産価格の下落や過剰債務調整の動きが経済に対する負のショックを顕在化・増幅させるリスクがある。
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