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ビューポイント No.2020-023

バイデン次期米大統領の対中政策と求められるわが国の対応

2020年11月19日 牧田健


次期米大統領には民主党のバイデン前副大統領が就任する見通しであるが、対中政策については、引き続き強硬姿勢が維持されるとみられる。

米国の対中政策は、2017 年末に、議会超党派・官僚・軍を中心に、これまでの「エンゲージメント(関与)」は失敗であり、今後は「中国は現状打破勢力である」との認識のもと、態度を改めるまで断固たる対応を続けるという方針に変更されている。この背景には、中国の台頭に伴う米国の覇権の揺らぎがある。米国民も中国に対する反感を強めており、米国の為政者は党派を問わずもはや中国に対し弱腰な姿勢はとれなくなっている。

ただし、トランプ現大統領が「米国第一主義」のもと、中国のみならず同盟国に対しても高圧的な姿勢であったのに対し、バイデン氏は、同盟国・友好国と連携し、国際的な枠組みを活用して対中圧力を強めていく方針を示している。また、国内雇用を重視し貿易・通商に焦点を当てたトランプ氏と異なり、人権や環境問題等も含めたより包括的なアプローチをとっていく方針である。バイデン氏のアプローチは、国際的な中国包囲網を形成することができれば、中国にこれまで以上のプレッシャーをかけられる一方で、時間がかかり骨抜きになるリスクも有している。

中国の影響力が世界的に広がらないようトランプ現政権が実施している「封じ込め」は、バイデン政権下でも継続される可能性が高い。「封じ込め」に当たっては、米国が優位性を保持している半導体分野での取引規制を通じて、中国のIT関連技術革新、半導体国産化のスピードを鈍化させていくとみられる。これは軍事面における米国の優位性確保にもつながる。また、基軸通貨ドルを抱え、国際間の資金決済における圧倒的な支配力で、金融面から制約を課し続けるだろう。

一方、中国依存を低下させるという「デカップリング」は、積極的には推進しない可能性が高い。米国は 製造業の分野で中国依存度が高く、 自身の 供給面で経済活動・日常生活に支障を 来しかねない。そもそも、 米国では 生産能力 が 低下しているほか、海外での代替生産も困難であり、供給不足を補う術が 乏しい 。サービス分野で も、インバウンド や海外留学生の減少という形で、マイナスの影響を被る恐れがある。

一方で、いち早くコロナ禍を収束させ景気回復軌道に乗せるなど、現体制に自信を深めている中国が、米国の圧力に屈することは想定し難い。長期的な国力逆転を 展望して、現在の中国の対米姿勢は抑制が効いているが、これはかえって米国の対中姿勢を一段と強硬化させる誘因にもなりうる 。結局、米中対立 の 長期化は避けられず、米国の対中姿勢が緩和的になること はない とみられる。

米中対立が激化するという事態になれば、中国依存度が高いわが国経済に需要・供給両面で甚大な悪影響が及ぶ恐れがある。したがって、わが国政府は、米中の対立が先鋭化していかないよう、EU等とともに仲介役を担っていく必要があ
る。同時に、わが国企業も、米中対立によって受けるダメージを極小化する一方で、それによってもたらされるチャンスをしっかりとつかんでいく べきだろう。

第1に、米国向け輸出拠点としての中国の依存度を低下させていくことが不可欠であり、中国以外に生産拠点を設ける「チャイナ・プラス・ワン」の動きを加速させていく必要がある。第2に、最先端 半導体を活用したIT関連財の中国を除く世界での需要獲得である。同分野における中国企業の競争力低下は、わが国IT関連企業にとって需要獲得の絶好の機会となりうる。 その実現のため、2000年代以降 失速 したわが国IT産業の競争力を改めて強化していくことが 不可欠である。また 、軍事転用技術の見極めも強化する必要 が ある。第3に、向こう10年程度を展望すれば、米国を上回るペースで成長を続ける 中国 の 需要を取り込むことも欠かせない。 最先端 半導体とそれを活用したIT関連財や軍事転用可能財 以外の分野では、米中関係を注視しつつ、増大する中国需要を したたかに取り込んでいく 発想がわが国の成長には不可欠といえる。

・バイデン次期米大統領の対中政策と求められるわが国の対応(PDF:754KB)
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