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コロナ禍とSDGs

2020年11月13日 大森充


1.コロナ禍による社会課題変化
 全世界で未曽有の事態を引き起こしている新型コロナウイルス感染拡大は依然として威力が衰えず、世界各地は第二波や第三波の脅威にさらされている。実際、イギリスやフランスは2度目のロックダウン(都市封鎖)を行い、感染拡大の抑止に尽力している状況である。
 かかる状況下、SDGs(Sustainable Development Goals)に代表される社会課題は変わったのであろうか。SDGsは持続可能な開発目標と訳され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」を標語とし、2030年までに解決を目指す17の社会課題を意味する。コロナ禍前の2015年に採択されたSDGsのそれぞれの社会課題が、コロナ禍というパンデミックによってどのような影響を受けたかについて考察をしたい。

2.コロナ禍で解決意識が強くなったゴール
 コロナ禍は全世界的に「ステイホーム」を強いることになり、結果として、人が家から外に出なくなり、労働集約型産業は停止する事態となった。その結果、奇しくも、社会課題解決に光明が差す結果も生まれた。
 米国ニューヨークではロックダウンの3日後、ITを活用したオンライン教育を実現している。日本ではそこまで迅速にオンライン教育に移行できたわけではないが、オンライン教育が一般化し始めているレベルに到達している。これは「4.質の高い教育をみんなに」というゴールに対し、リモート授業など遠隔での教育インフラ整備が前進したと言って良いのではないか。他方、ロックダウンで物理的に学校に通えない、ITインフラが整っていないといった事情によって、教育格差が生じているという、見過ごせない新たな社会課題が顕在化するようになったともいえ、留意が必要である。
 これらITインフラの整備やデジタル・テクノロジーの利活用は我々の働き方を大きく変えるものとなった。コロナ禍は、いわゆる、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させ、リモートワークを推進させ、よりワークライフバランスを実現しやすくなり、「8.働きがいも経済成長も」というゴールを前進させたと捉えることもできる。
 また、コロナ禍は全世界的に衛生意識を強く芽生えさせるものとなった。具体的には、マスク着用による飛沫感染防止や手洗い・うがいの徹底による感染防止が挙げられる。その意味では、「6.安全なトイレを世界中に」というゴールに対し、総じて衛生観念が底上げされたことによって、早期解決への意識が強くなった捉えることができるのではないであろうか。
 そして、全世界的に経済が停滞したことは、我々人類にとっては大きな打撃となった一方、地球環境にとっては良い影響を与えている。ロックダウンが全世界的に起きた4月の1カ月間、経済が停滞することでオゾン層が回復する、空気がきれいになる効果が見られ、インドの首都デリーでは久方ぶりにヒマラヤ山脈が見えたというニュースもあった。12カ月のうち、1カ月程度経済が停滞することが地球にとって好影響となるのであれば、経済は1年間のうち11カ月とし、1カ月はバケーション、加えてベーシックインカム制度を導入することで基礎的な生活を維持することが新資本主義の在り方ではないか、と提唱している学者も出始めている。その意味では、「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」は経済活動停滞に伴う電力需要減となったことや、「13.気候変動に具体的な対策を」については新たな対策を考えるきっかけとなり、コロナ禍により早期解決への意識が強くなったといえるのではないか。

3.コロナ禍により遅延見込みとなったゴール
 他方、コロナ禍で解決が遅延傾向にあるゴールもある。
 今回のコロナ禍によって大きな影響を受けたのは経済と雇用である。経済活動による資金循環が止まったことで、結果として貧困や飢餓を助長することにもなり、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」において解決遅延が起きている。
 また、生命を脅かす事態となったコロナ禍は、我々人類の健康に対して直接的な脅威となり、さらに「ステイホーム」を強いられたことから孤独化、非接触化によるメンタルウェルネスの喪失も社会課題化していることを鑑みると、「3.全ての人に健康と福祉を」というゴールは大きく解決遅延したと捉えることができる。
 加えて「ステイホーム」によって、家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス)が深刻化していることから「16.平和と公正をすべての人に」というゴールは児童虐待等のリスクがさらに増加し、解決遅延している状況にある。
 そして、コロナ禍以前はプラスチックゴミの問題は非常に関心が高く、多くの企業でプラスチック使用禁止の流れが出始めていたが、衛生面を考慮する場合、一定程度、使い捨て可能なプラスチックの方が感染防止には良いとの認識もあり、ややトーンダウンした印象がある。そのため、「12.つくる責任つかう責任」「14.海の豊かさを守ろう」の解決遅延も発生しているのではないか。

4.現状認識(アクナレッジ)に基づく価値創造ストーリーの再構築を
 未曽有の事態を引き起こしているコロナ禍は新たな社会課題を顕在化させている側面もある一方、これまでの社会課題解決を速めるきっかけともなった。不確実性が高く混沌とした外部環境下、企業経営には社会性と経済性の両立が求められ、持続的成長の難しさが増している。このような未曽有の事態を冷静に捉え、自社が解決すべき社会課題を見極めながら、事業を通じたSDGsに貢献する価値創造のストーリーを再構築することが、今後の企業経営におけるヒントになるのではないか。社会課題はその名の通り課題であり、需要である。コロナ禍で変容した社会課題を見つめなおし、新たな需要と捉えることができれば、コロナ禍を事業機会と捉え、社会に貢献する事業を生み出すこともできるであろう。

図表1|コロナ禍とSDGs


出所:ユニセフ,UNDPを基に日本総研作成


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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