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リサーチ・フォーカス No.2020-027

地方銀行に求められる再編戦略とは ~地方創生と事業成長の好循環に向けた「地域×業務」の拡大~

2020年11月11日 大嶋秀雄


菅首相の発言を受けて地方銀行の再編が注目されている。実際、地方銀行は、日銀のマイナス金利政策を受けた利鞘縮小により、貸出残高の増加にもかかわらず、収益力は低下している。現状では、一定の収益規模と健全性を維持しているものの、今後、人口減少に伴う資金需要の減退も見込まれるなか、再編を含めたビジネスモデルの見直しは急務と言える。

地方銀行はこれまでも、①経営効率化、②取引量の増加、③サービスの高度化、④競争の緩和といったシナジー効果を想定し、経営統合や業務提携を進めてきたが、全ての再編が所期の効果を実現したとは言い難い。今後は、収益力低下への対応策として、トップラインの強化につなげるため、②取引量の増加、③サービスの高度化を企図した広域再編を優先すべきであろう。

また、地方銀行は再編と同時に成長戦略を講じることにより、シナジー効果の最大化を図るべきである。再編と組み合わせた成長戦略として、ふくおかFGはシングルプラットフォーム・マルチブランドを掲げ、各県の傘下銀行でFGや福岡銀行の機能を共同活用しているほか、山口FGは地方共創ユニットを設置し、様々な地方創生事業をグループ一体で展開している。

地方銀行が再編において目指すべきは、「地域×業務」の拡大による地方創生と事業成長の好循環の実現である。具体的には、①近隣都道府県の地方銀行との経営統合を軸に商圏拡大・ノウハウ蓄積を進め、②経営統合で創出される人的・財務的余力で専門組織を強化して業務を拡大、③様々な分野で地方創生を促し、地方創生と事業成長の好循環につなげることが考えられる。

多くの企業が地方銀行との業務提携を進めているように、地方銀行が有する強固な顧客基盤は他業態にない強みである。足許で検討されている銀行の業務範囲規制の見直しは、地方銀行が顧客に提供する付加価値を一段と高めるであろう。地方銀行は、再編圧力の高まりを、自らの強みを発揮する好機と捉え、「地域×業務」の拡大によるビジネスモデルの変革を進めることが重要である。


地方銀行に求められる再編戦略とは ~地方創生と事業成長の好循環に向けた「地域×業務」の拡大~(PDF:801KB)
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