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リサーチ・フォーカス No.2020-026

デンマークのデジタル・ガバメントー「一貫性」と「透明性」、「利用者中心」の視点が特長

2020年11月04日 野村敦子


デンマークは、日本とほぼ同時期の2000年代初めに電子政府への取り組みを本格化させており、国連の世界電子政府ランキングで2018年・2020年の2期連続1位と評価されているデジタル・ガバメント先進国である。その特徴として、中央政府・地方自治体のみならず病院や教育機関など公的セクター全体を対象としている点や、政府間(G to G)の基盤整備から着手し、政府と民間企業間(G to B)、次いで政府と市民間(G to C)と段階的かつ計画的に範囲を広げている点が挙げられる。

デンマークのデジタル・ガバメントの主要な基盤として、個人番号「CPR」、個人認証システム「NemID」、公共決済口座「NemKonto」、市民向けポータルサイト「Borger.dk」、電子私書箱「e-Boks(Digital Post)」などがある。利用者がアクセスする窓口の一元化が図られており、必要な情報・サービスを分野別にメニュー表示しているなど、利用者視点に立ったサービス設計となっている。

デンマークのデジタル・ガバメントがわが国に比べ大きく進展した背景として、長期的な視点から、以下の取り組みを推進してきたことが指摘できる。第1に、財務省傘下の運営委員会とデジタル化庁による一元的な推進体制の整備とガバナンスの強化である。第2に、地方自治体の共通戦略を策定し、地方自治体が出資する非営利企業によるシステムやサービスの共同調達を実現している。第3に、新しい法案は原則デジタル対応とする制度や行政機関が保有する基本データを共同利用する基盤の整備である。第4に、利用者視点のサービス設計とともに、利用者へのデジタル対応の義務づけである。第5に、民間との共創を通じた公的セクターのイノベーション促進である。

わが国ではデジタル庁の創設が検討されているが、司令塔組織に焦点を当て、デンマークに学ぶべき点を挙げると、①国・地方自治体の取り組みについて「一貫性」を重視すること、②地方自治体に対する技術的な支援体制を提供すること、③進捗状況や成果の検証・評価について一段と「透明性」を高めること、が指摘できる。また、デジタルサービスへの個人番号の活用や民間との認証システムの共同利用、基本データの整備とデータベースの構築(ベースレジストリ)などは、わが国でも実現を目指して、中長期的に検討していくべき課題といえよう。


・デンマークのデジタル・ガバメントー「一貫性」と「透明性」、「利用者中心」の視点が特長(PDF:1397KB)
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